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医人伝

 青木裕明さん(52) お〜ろら薬局(愛知県岡崎市)薬剤師

心に寄り添う服薬指導

 「困っていることはないですか」「ちょっと良くなってますかね」。薬の説明とともに声掛けを絶やさない。愛知県岡崎市で薬局二店舗を経営。主に心療内科の患者が来る店舗で調剤をしている。

 医師が薬を処方しても、患者が指示通りに服用しなければ、治療は中途半端なものになりかねない。だが実際は「服薬の大切さが伝わっていない。嫌いだったり、忘れたりで服用できていない患者は結構いる」。精神疾患の患者は薬への抵抗感が強いケースも多い。指示を守れていないと分かった時は理由を尋ね、代わりに医師に相談をすることもある。

「患者の心に手が届く薬剤師」を目指し、服薬指導をしている青木裕明さん

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 薬局で勤め始めたのは三十九歳の時。それまでは別の道を歩んでいた。

 横浜市出身。北海道大大学院の薬学研究科を修了後、製薬会社に就職し、新薬の開発に向けた研究に心血を注いだ。しかし、十年もの年月をかけて取り組んできた研究は、臨床試験まで進みながら、会社の事情で海外の企業に売られることに。研究を続けられないならと退社した。

 薬剤師の資格だけを頼りに一から職を探し、親族が愛知県にいた縁で岡崎市の薬局に勤め始めた。

 半年たったある日、透析に通う男性に「この薬は本当に効くのか」と質問された。強い鎮痛剤。説明した上で、なぜ処方されたか聞くと末期がんだった。痛みを訴えても取り合ってもらえず発見が遅れたという。医療を担う一員として「申し訳なく思う」と頭を下げると、「あんたみたいに話を聞いてくれる人に会えていたら、こうはならなかった」と男性。「治療の技術や薬では補えない部分がある。患者の味方になれるのは薬剤師かもしれない」と考えた。

 新たな希望を見いだし、薬局と掛け持ちしながら、市内の心療内科でも七年勤めた。空いている診察室を使って服薬を指導。患者とじっくり向き合う中で「心理学の知識があれば指導に生かせる」と心理カウンセラーの資格も取得した。

 十年前に開業。薬剤師としての仕事のほか、精神疾患についての講演や保健所が行う患者相談も引き受ける。

 「患者や市民は医療や健康の相談相手を求めている」と感じる。「いざというときに頼れる『かかりつけ薬剤師』として役割を果たしたい」 (小中寿美)

 

 

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