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医人伝

朝居朋子さん(51) 藤田保健衛生大(愛知県豊明市)医療科学部准教授

「命のリレー」重み伝える

 日本臓器移植ネットワークで臓器移植コーディネーターを18年務めた後、2年前に大学教員に転身。大学院で、コーディネーターの専門性を高めるための教育に取り組む。

 コーディネーターは、病院やネットワークのほか、運搬などのため交通機関、警察など多くの機関をつなぐ要だ。現役で病院内のコーディネーターを務める看護師らに、自らの経験談を交えながら制度や実務を解説している。

「いのちの授業」で中学生と語らう朝居朋子さん=愛知県岡崎市で

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 愛知県刈谷市出身。大学では法律を学んだ。修士論文のテーマに臓器移植を選び、コーディネーターに興味を持った。東京の法律事務所で働いた後、ネットワークに採用された。

 最初に担当したケースは心停止後に提供した30代男性患者で、人の臨終に初めて立ち会った。男性は妻と子ども2人を残した。終末期を迎えた患者の家族の感情が大きく揺れるさまを目の当たりにし「悲しむ家族にどう寄り添えばいいのか」と問題意識を持ち、グリーフ(悲嘆)ケアを学んだ。

 必要な医学的知識は一から学んだ。一方で「医療が専門でなくて良かった」とも。医療者にはない視点で物事を見られたり、法律の知識を現場で生かしたりすることができた。

 提供をしなかった例を含め80例ほどを担当。「ドナーや家族から人の優しさや強さを教えてもらった。ドナーと家族の最期の場面を大事にする大切さを院生に伝えられたら」

 印象に残るのは2010年施行の改正臓器移植法で導入された親族優先提供を国内で初めて実現した事例だ。20代の娘への生体腎移植を準備していた40代女性が、偶然脳死状態となった。親族優先提供を希望することを本人が記した書面が必要だが、当初は見つからなかった。

 夫が「娘に提供したかったのは明らか」と書面不備のままの親族優先提供を主張したが、譲らなかった。結局、意思表示カードが見つかり望みがかなったが「コーディネーターは家族に寄り添うと同時に法律を守る立場でもある。厳しい対応を求められた」と振り返る。

 昨年から中学校での「いのちの授業」を始めた。将来、医師や看護師となる学生が先生となり、心臓の働きや身体の仕組みを教える。一人一人の体に小宇宙が詰まっていることを知ってもらい、命の大切さを伝えている。「いかに生きて死ぬかを考えることで、人生の豊かさが決まる」と信じている。(稲田雅文)

 

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