トップ > 特集・連載 > ほどほど道 > 記事

ここから本文

ほどほど道

<ほどほど道> (2)広げすぎない

「超ローカルスーパー」を掲げる「一期家一笑」。笑顔でお客さんをもてなす杉浦国男さん(中)と大西洋さん(左隣)=愛知県豊橋市で

写真

◆宝詰まった小さな店

 ♪あれも欲しい これも欲しい…。ザ・ブルーハーツのヒット曲「夢」の一節ではないけれど、私たちの購買欲はとどまることを知らない。ならば売る方だって。たくさん商品をそろえ、たくさんもうけたい。

 「いや、商品を金と交換するだけがスーパーじゃないですよ」。愛知県豊橋市にある「一期家一笑(いちごやいちえ)」の店長杉浦国男さん(65)の考えは、どうも違うらしい。

 創業六十年。たった、と言うのは失礼だが、売り場面積はコンビニより一回り大きい程度の二百六十平方メートル。商圏は五百メートル、年商は約二億円。そんな店が黒字経営を続け、大手チェーンとの淘汰(とうた)で減り続ける地域スーパーの希望の星になっている。

 店内に入ると、葉付きの大根やニンジン…。「○○さんが育てた野菜です」。農家の写真入り看板が目立つ。傍らでは、主婦たちが井戸端会議。常連の金原二見枝さん(62)は「友達に会いに来る感じで楽しいのよ」と笑う。

 店はJR豊橋駅から二・五キロの住宅街にある。近隣で食品スーパー四店が競合していた十年ほど前、車で十分ほどの場所に大型店が進出、他の店は閉店に追い込まれた。品ぞろえや価格では太刀打ちできない。考え抜いた杉浦さんがたどり着いた結論は「小さいからこそ、できることがある」。

 店員は客を名前で呼び、子ども料理教室や餅つき大会を企画。パック詰めの肉や野菜が多すぎるお年寄りには、減らして売る。配達時に電球を交換したり、段ボールを引き取ったりと、ついでの頼まれごとにも応じる。店の正面に掲げられた「超ローカルスーパー」の看板通り、徹底した地域密着路線を貫く。

 もちろん、利益度外視、ではない。

 昨秋初めて仕入れた奥三河の伝統野菜「天狗(てんぐ)ナス」。一般的なナスより五〜六倍大きく、一個六百円と値が張るため流通しづらかった。それを農家から直接買い付けて揚げ浸しに。総菜のパックで売ると、ナス一個が千円の売り上げになった。

 企画した杉浦さんの長男大西洋(ひろし)さん(33)は「農家にとっても、伝統野菜が食べられる消費者にとっても、店にとってもうれしい」。つまり、三方良し。そんなお総菜が評判を呼び、デパートから出店の誘いが舞い込む。

 九年前の大西洋さんだったら、喜んで受けていただろう。後継ぎとして店に入った当時。同業者と身の丈を比べては引け目を感じ、「早く二号店を出したい」ばかりだった。

 今は違う。「地域に宝の山があるのに、手を広げたら、毎日来てくれるお客さんや生産者の顔が見えなくなっちゃう」。そう言って店員との合言葉を教えてくれた。

 「普通を、ちゃんと」

 <大型化するスーパー>日本チェーンストア協会によると、全国のスーパー販売額は1996年度をピークに2012年度まで前年割れが続いた。長年のデフレに加え、ドラッグストアなど他業種店との競合が激しくなっている。イオンなどの大手スーパーは専門店街を備えたショッピングモールを増やして大型化しつつあり、12年度の平均売り場面積は3052平方メートルだった。

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索