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ほどほど道

<ほどほど道> (3)食べすぎない

肥満予防のため、動物用プールで楽しそうに泳ぐ犬のリリー=名古屋市名東区の名古屋動物医療センターで

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◆飼い主の姿映す犬

 十一歳のリリーはただ今ダイエット中。オレンジ色のライフジャケットを着け、視線の先に標的をとらえると水面を一直線。短い脚で、懸命に水をかく。

 胴長の体形が愛くるしい、ミニチュアダックスフントのメスだ。名古屋市名東区にある名古屋動物医療センターのリハビリプールに週一回通っている。プールから上がると、しっぽを振りながらちょこちょこと歩き回った。

 「もうダメかと思ってました」。近くに住む飼い主の柳河瀬(やながせ)真一さん(72)、真知子さん(65)夫妻がプールサイドで目を細める。

 二〇〇七年十一月、リリーは突然歩けなくなった。重度の椎間板ヘルニア。太っていると背骨への負担が増す。リリーの場合、肥満が原因かは定かでないが、当時の体重は五キロ強。人間でいえば標準より数キロ重い「小太り」だった。

 「あげちゃうんですよね…」。かわいいから、つい。ドッグフードのほかにも、家族の食事のおこぼれを少しだけ。でも、人間の「少し」が積み重なれば、栄養過多になってしまう。

 野生動物に肥満はない。例えば、ライオンは空腹を感じてから狩りを始め、満腹になると餌に見向きもしなくなる。でも、ペットは違う。人とともに生きているからだ。

 「野生動物にとっては生存するための本能。人は根本的に『食』のとらえ方が違う」。日本食行動科学研究所(東京)の所長大森正司さん(72)は言う。

 調理し、盛り付け、誰かと食卓を囲む。人間にとって、食事は喜びであり文化だ。飢えを強いられた戦争から復興し、世の中に食べ物があふれた。おなかがいっぱいでも、「もったいない」「おいしそう」とまた食べる。

 過度のストレスも、食欲を増進させる傾向があるらしい。結果、生活習慣病が増え、過食症などの摂食障害まで出てきた。「好きなものだけを食い散らかすのでは、豊かとは言えない。食の教育が必要」と大森さん。そんな人の姿を、ペットが映し出す。

 実は、リリーがヘルニアになる二カ月前、真一さんは心筋梗塞で倒れた。その二年後にも再び発症。心臓の半分の機能を失った。

 二度の大病で、毎日ジムへ通い始めた。食事は肉主体から魚や野菜に切り替えた。ごはんは一食、お茶わん一杯だけ。一方のリリーは再発防止のためプールで運動し、間食をなくした。食事はダイエット用のドッグフード−。

 「年を取ると、食べ物の好みも変わってくるわねえ」。真一さんはリリーと自身の食生活の変化を、こうとらえようとしている。リリーは人でいえばもう六十五歳。一人と一匹はほどほどに食べる道を行く。長く一緒にいるために。

 <人とペット>2013年の国民健康・栄養調査で、肥満率は男性28・6%、女性20・3%。女性は横ばいだが、男性は40年ほど前と比べて倍増している。食生活の欧米化や、交通機関の発達などによる運動不足が原因とみられる。一方、ペットフード大手「日本ヒルズ・コルゲート」(東京)が13年に実施したアンケートでは、全国の獣医師712人の6割以上が「ペットの肥満が増加している」と答えた。

 

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