トップ > 特集・連載 > 考える広場 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

考える広場

民進党の明日は

 安倍政権の支持率が好調さを維持している。余勢を駆って衆院総選挙も早まりそうだ。対して、最大野党の民進党は、蓮舫氏が新代表に選ばれたものの存在感はいまひとつ。何が問題なのか、どうすればいいのか。三人の論者が占う「民進党の明日」はどっちだ!?

 <民進党の動向> 民主党と維新の党が合流した民進党は今年3月に発足した。共同通信がその前後に実施した世論調査によると、支持率は8・0%。2月の調査で民主(9・3%)と維新(1・2%)が得た数値を下回る厳しい船出となった。

 9月の代表選では女性で40代の蓮舫氏を新代表に選出。直後の世論調査では、「蓮舫氏に期待する」という人が56・9%に上ったものの、支持率は9・9%にとどまった。

◆実効性ある政策必要 評論家・宇野常寛さん

宇野常寛さん

写真

 今の民進党には、端的に二つ問題があると思います。一つは、実務的な政権担当能力がないこと。旧民主党の三年間で、少なくともそう国民から認識されているわけで、これが覆らない限り絶対に政権は取れないでしょうね。国民は一定の批判票を民進党に与えながらも決して政権は与えない。民主主義の成熟のために野党に投票しながら、選挙外では与党との連携を深めロビイングや政策提案を行っていく民間のプレーヤーが増えるでしょう。要するに五五年体制に逆戻りです。

 民進党はこのイメージを払拭(ふっしょく)するためには実績で示すしかない。地方で結果を出すのでもいいし、自民党の改革派のお株を奪うような実効性の高い政策提案も必要です。民主党は政権を取る前に「自民党と同じ」と揶揄(やゆ)されていましたが、だからこそ政権が取れたのだと思います。民進党もまた「より柔軟でクリーンな自民党」をまずは目指すべきです。

 そしてもう一つの問題は言葉の最悪な意味で左翼だと思われていること。これではマジョリティー(多数派)の支持を集めることは難しい。現代日本において左翼というのは、究極的には自分探し文化以上のものだとは思われていない。もちろん、そうじゃない人たちもいるのですが、全体的に現実と遊離したきれい事を言ってウットリする文化が定着しすぎていて、現実的な問題解決に寄与するケースが少なく、ジャーナリズムやアカデミズムのそれを商売にしている人と彼らの顧客である自分探し層以外からは基本的に相手にされていない。民進党は今回の野党共闘で、端的に言えば自らこの「左翼」のレッテルを貼られに行ってしまった。

 ではどうするか。繰り返しますが、民進党が目指すべきは「自民党よりクリーンで柔軟な自民党になること」です。安倍政権のナショナリスティック(国家主義的)にすぎるふるまいや、昔の自民党の利権政治の残滓(ざんし)とは、決然と手を切りつつ、経済政策においてはより効果的な対案を模索し続ける。たとえばより効果的なリフレ政策を場合によっては主張してもいいはずです。そうすることではじめて、民進党は自民党内の改革派に「組む相手として価値がある」と思われることができる。この現実に向き合わない限り、民進党に未来はないでしょうね。

 (聞き手・小野木昌弘)

 <うの・つねひろ> 1978年、青森県生まれ。批評誌「PLANETS」編集長。文学、政治、サブカルチャーなど幅広く論じる。『ゼロ年代の想像力』『日本文化の論点』など著書多数。

◆正しさを訴え続けて 作家・室井佑月さん

室井佑月さん

写真

 あたしはもう、次の選挙では民進党を応援できない。個別の議員を見れば、すごくしっかり活動していて、評価したい人もいっぱいいるんだよ。でも、全体で見ると、がっかりさせられることばっかり。一度分裂するしかないだろうなと思う。

 原発の再稼働に、安保法制、それから沖縄・普天間飛行場の辺野古への移設問題と、安倍さんが首相になってから、糾弾しなくちゃいけないことが、たくさんあったでしょう。政治と金の問題だって、いくらでも突っ込めたはず。でも民主党のころから、肝心なところでグダグダだった。

 代表選も、蓮舫さんの出馬記者会見を見た時から、こりゃだめだと思ったの。共産党との共闘や、支持団体である連合との関係について、きちんとした考えを示さず、どっちつかずなまま。何がしたいのか、まったく分からない。そういう点について、ほかの候補ともっと侃々諤々(かんかんがくがく)の議論をするべきだった。そうすれば国民の注目も集まっただろうに。

 連合の傘下には原発推進の「電力総連」とかもある。次の選挙でどうなるか、いろいろな事情がちらついて、言うべきことが言えないんだろうね。目先の選挙しか見ていないからそうなっちゃうんじゃない? でも政治は、もっと長い目で国をどうしていくかを考えていかなくちゃ。民主党政権で、鳩山さんが首相として「友愛」という理念を掲げた時、夢みたいな話だと批判する人もいたけれど、そういう理想こそ、本当は政治家にとって大事なものだと思うよ。

 そもそも支持率からいって、今の支持層を固めたって与党に勝てない。無党派層をどれだけ動かすかでしょう。強いものについたほうが、トクするように世の中はできているわけで、自民がより強くなるのは当たり前。その力に対抗するとしたら、圧倒的な正しさをもってするしかない。

 与党の強引なやり方、ごく一握りの人に富を集中させるような政策に、疑問を持っている人はいっぱいいる。民進党は、そういう思いの受け皿になるつもりで、死ぬ気で国民に寄り添うしかない。正しいことを言い続けるしかない。一緒に進めない人は切り捨てる覚悟でね。それができれば一時的に議席が減ったとしても、悪循環は断ち切れる。それしか再生の道はないと思う。

 (聞き手・中村陽子)

 <むろい・ゆづき> 1970年、青森県生まれ。雑誌モデル、ホステスなどを経て作家に。文筆のほかテレビ番組のコメンテーターなどで幅広く活躍。近著に『息子ってヤツは』(毎日新聞出版)。

◆話し合い、意見固めを 経営コンサルタント、PEC協会会長・山田日登志さん

山田日登志さん

写真

 企業のリーダーをたくさん見てきました。リーダーの要因は、才能が七、八割を占める。それは何か。「気」です。人は理屈だけでは動かない。その人の「気」が多くの人に影響を与えると「人気」になる。安倍首相にはそういう「気」がある。蓮舫さんは、二重国籍の問題はあったが、拝見すると「気」は感じますね。

 蓮舫さんに期待したいと思いますが、民進党全体を見ると一人一人が自由すぎて統率されていません。お山の大将ならぬ小山の大将ばかり。集合体だから個性が出し切れない。政治はこれと決めて執行することが大事だと思いますが、これでは執行できません。企業もそうですが、執行権を発揮しやすいのは独裁。社長が引っ張る会社じゃないと発展は望めません。

 独裁といっても、みんなの意見を本当に吸収しているかどうかが大事です。民意を反映していない独裁は失敗します。それを回避するには、一つは良い参謀を置くことです。本田宗一郎さんには藤沢武夫さん、松下幸之助さんには高橋荒太郎さんがいた。最初はそういう存在がいなくても、この組織はどうあるべきかという「気付き」が内部で進めば参謀が出てきます。

 もう一つはヒアリングを重ねることです。僕が工場の再建を手掛けるときは、皆にたくさん質問し、意見を出してもらうことから始めます。リーダーとメンバーが互いに刺激し合って意識改革を進め、目標を明確にすること。蓮舫さんも、「民進党の夢を語ろう」と言って、前原(誠司)さんを含めた党内の有力者たちと三日ぐらい缶詰めになって話し合ったらどうですか。民進党は「批判ばかり」というイメージ。批判では国民の心に響かない。党内の意見が固まれば、国民が期待する、与党に対抗する勢力になり得るのではないですか。

 現場に降りて耳を傾けることも必要でしょう。日本のメーカーが駄目になった理由の一つに、製造現場を知らない経営幹部が増えたことがあります。民進党は今こそ、国民が生き、暮らす生活の現場に立ち戻るべきです。どこかの地域をモデル地区にして、蓮舫さんを含めた党内の有力者が入ったらどうですか。そうして初めて、民進党はスタート地点に立てるのではないでしょうか。

 (聞き手・大森雅弥)

 <やまだ・ひとし> 1939年、岐阜県生まれ。キヤノン、ソニーなど数百社の工場の生産性向上をサポートし、「工場再建人」の異名を持つ。『ムダとり』『改善魂の叫び』など著書多数。

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索