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岐阜市長選特集

<県都の明日は> (5)増える孤独な老後

一人暮らしの女性の葬儀。喪主は家族代行のNPO職員(中央奥)が務めた=岐阜市内の葬儀場で

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 年が明けて間もない六日、ある女性の葬儀が岐阜市内の斎場でひっそりと営まれた。一人暮らしの八十一歳。参列者は愛知県内で離れて生活する長男(49)ら、わずか四人だ。

 親子が顔を合わせたのは同居を解消した九年前以来。仲たがいしたわけではないが、疎遠だった。「もう一度話をしたかった。ごめんな、ごめんな…」。簡素な祭壇の前で、長男は声をつまらせた。

 家族に代わり喪主を務めたのは、NPO法人「きずなの会」岐阜事務所(岐阜市)の職員。身寄りのない人に身元保証や生活支援、葬儀の手配といったサービスを提供する。住昇所長(70)は「参列者が誰もいない葬儀も珍しくない」と明かす。

 会は名古屋市で二〇〇一年に発足し、入会には百九十万円の預託金が必要となる。決して安くはないが、全国で四千人超が契約する。自治体からの紹介も多く、生活保護受給者の会員もいる。

 岐阜市内のアパートで暮らす男性(81)も二年前に入会した。心筋梗塞などで入院した際の身元保証を頼み、着替えも病院まで届けてもらった。「遠くの親戚より近くの他人の方が安心」と感謝する。

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 市内の高齢者世帯はこの二十年で一・七倍に増え、約七万二千世帯。このうち独居(一万八千人)の割合は県全体より高い。死後しばらくしてから遺体で見つかるケースも昨年まで相次いだ。

 その反省から、市は関係機関の間で情報共有を密にする月一回の連携会議を設置。高齢者の見守りで警察と協定も結んだ。地域での買い物支援やサロン開設も後押しする。

 一八年度からはさらに、身近な相談窓口である地域包括支援センターの機能強化にも乗り出すが、担当者は「SOSを発せられない人も、発したくない人もいる。支援の網に全てが引っ掛かるわけではない」。複雑化する問題への対応の難しさを認める。

 JR岐阜駅前にそびえ立つ四十三階建ての高層マンション。ここにも会員の女性(77)がいる。友人とのランチを楽しみ、ボランティアで高齢入居者の見回りを毎週続けている。

 神奈川県にいる一人娘にお墓の世話をかけたくない−。それが入会の理由だった。「楽に逝けると分かっていたら、今をもっと楽しく生きられるのに」。やがて来る最期に思いを巡らせる。

 超高齢化の足元で広がる家族代行というつながり。「時代を映している」という住さんは不安を漏らす。

 「家族や地域の関係が壊れた社会は、この先どこに向かうのだろうか」。その問いかけは、行政にも重く突きつけられている。 =おわり

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 この連載は小倉貞俊、鳥居彩子、大山弘、杉浦正至、近藤統義が担当しました。

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 <岐阜市内で相次いだ遺体発見事案> 2016年11月、茜部本郷の民家で70代夫婦と長男の3人の遺体を発見=地図<1>。地域包括支援センターの職員が何度も訪ねたが、支援を拒む「セルフネグレクト」状態だった。17年5月には祈年町の民家で80代男性の遺体が見つかり、放置していた同居の息子が年金の不正受給で有罪判決を受けた=同<2>。

 同じく5月、戎町のアパートの一室で80代男性と60代女性の遺体が見つかった=同<3>。

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