トップ > ゴッホとゴーギャン展 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

ゴッホとゴーギャン展

ひまわりと青空(3) どん底の入院生活

再現されたゴッホの病室を案内するマチルダさん=フランス、サン・レミのサン・ポール・ド・モゾール修道院で

写真

 「二人の結束は壊れてしまった」「僕はどん底に落とされた」。耳切り事件の後、ゴッホは弟のテオへの手紙で嘆いている。左耳を失ったことより、ゴーギャンを失ったことの方がよほどショックのようだ。

 彼はアルルでの生活を続けようとしたが、一部の住民が「頭のおかしい人間を自由に生活させるな」と市に請願した。街の人々に拒絶された苦痛も大きかったのだろう。自らの意思で、近くの町サン・レミの郊外にあった修道院内の精神病院に入院した。南仏に画家たちのアトリエを築こうという彼の夢はついえた。

 「これがゴッホのベッドです」。ガイドのマチルダ・ドゥビリエさんが狭い部屋の一角を指し示す。寝具は今朝まで使われていたかのように薄汚れていた。病院には今も約百三十人の患者が入院中で、ゴッホの病室は観光客向けに開放された別棟に再現されている。

 療養中のゴッホは、精神的な病の発作に苦しめられた。突然、錯乱状態に陥り、何をしでかすか分からない。絵の具をのみ込もうとしたこともあった。それでも調子のいい日は屋外に出て麦畑や糸杉を描き、許可が下りなければ室内で模写に励んだ。失意のゴッホが毎日眺めたであろう鉄格子の向こうの寂しい風景に、胸が締め付けられた。

 表に出ると、広大なオリーブ畑を強風が吹き渡った。真っすぐ立つこともままならない。南仏を毎日のように襲う北風ミストラルだ。湿気を吹き飛ばしてくれる一方、ゴッホにとっては写生の妨げでしかなく、よくテオに不平をこぼしていた。

 ただ、晩年のゴッホのうねるような筆の運びは、この風の影響もあるのではないかと、マチルダさんは指摘する。「ミストラルの吹く夜は、ゴッホが描いた空のような感じになるのをサン・レミの人々は知っています」。その風は、ゴッホの心の中にも吹き荒れていたのではないだろうか。(樋口薫、写真も)

 「ゴッホとゴーギャン展」は来年一月三日から三月二十日まで名古屋市東区の愛知県美術館で開催。前売り券は一般千三百円、高大生千円(当日券は各二百円増し)。中学生以下は無料。

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索