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一緒に新聞を作ろう 見出し付けるAI

 中日新聞は、静岡大情報学部の狩野芳伸准教授の研究室が開発中の人工知能(AI)に、初めて記事の見出しを作ってもらった。AIはこの記事に加え、過去1年の主なニュースの見出しにも挑戦。見出しを担当する整理記者が付けた見出しと比べ、その出来栄えは−。※(A)が付いた見出しはAI、(整)は整理記者が付けたもの。主見出しはAIによる

◆静岡大とコラボ 初の紙面化(整)

AIが作った見出しを見て意見を交わす狩野芳伸准教授(右)と岩間寛悟さん=浜松市中区の静岡大浜松キャンパスで

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 AIを作ったのは、同大四年の岩間寛悟(かんご)さん(21)。本紙が五年分のデータベースを提供し、AIが見出しの作り方を学習。見出しの基本に沿い、十字以内で指定すると、瞬時に多数の候補が生まれた。AIが良いと判断した順番に並んだ五十〜百の候補から、記者が選んだ。

 岩間さんは、新聞の見出しを見て「パターンを学習できる」と仮説を立て、まず過去五年で実際に掲載された見出しをAIに取り込んだ。その後、記事のデータベースから、特定の単語の後ろにはどんな単語が来るのか、その確率の高さを学ばせた。これとは別に、単語リストなどを取り込み、語彙(ごい)を増やした。

 過去約一年間に実際に報道した十一本のニュースに見出しを付けてもらうと、政治の記事の方が得意な傾向が見られた。犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が昨年六月に成立したニュースでは、整理記者が付けたものと全く同じ「『共謀罪』法成立」の見出しを生成。同一月の米大統領の就任式でも、「トランプ米大統領就任」と、紙面で使えるレベルの見出しを作った。

 一方で、同十二月に発表された流行語大賞のニュースは、年間大賞に選ばれた「インスタ映え」と「忖度(そんたく)」という言葉を見出しに取れなかった。

 AIは、記事中の単語を、過去の記事や見出しとの比較で「重要」かどうか判断する。岩間さんは「文章の意味をわかっているわけではないので、過去記事にないような新出の言葉を見出しにすることは難しい」と解説する。

 他にも、「数字」の重要性を判断することが苦手といい、最年少棋士の藤井聡太四段が公式戦新記録の二十九連勝を達成したニュースでは「藤井四段がプロ戦連勝」など具体性に欠ける見出しが作られた。

 日本新聞協会によると、今回のようにAIが生成した見出しを実際に新聞で印刷した例は「聞いたことがない」という。

 今回の結果を受け、岩間さんは「まだまだ改善の余地がある。さまざまなやり方を試して精度を上げていきたい」と話した。

◆政治が得意 数字は苦手(整)

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◆メディアの活用(A) 決算、短信でも(整)

 AIの活用は、国内外のメディアで始まっている。

 日本経済新聞は二〇一七年一月から、AIが作成した上場企業の決算記事を電子版などに掲載するサービス「決算サマリー」を始めた。決算発表資料から適切な数値を形式にあてはめて文章を作るほか、売上高や利益が変化した理由を分析して原稿に反映させる。ネット上に公開するまでの一連の作業は全て自動で、二、三分で終わるという。江村亮一・デジタル事業営業マーケティンググループ副グループ長は「付加価値の高い記事の質を高めるためにも、一部作業をAI化することが不可欠」と狙いを語る。

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 西日本新聞は同月、AIが作成した天気予報記事を一日だけの企画として掲載した。日本気象協会九州支社からの気温や降水確率などの天気予報データを取り込んで書かせた。

 朝日新聞は一六年から社内の省人化や外販を目指し、自動校正システムの開発に取り組む。記者が書いた原稿と、デスクが修正した原稿を読み込み、双方の違いから良い文章の特徴を見つけ出す能力をつけさせ、日本語の使い方や漢字の間違いを指摘、修正できるようにする。

 ヤフーは一六年、サイトのトップページの主要ニュース欄「ヤフートピックス」の見出しづくりで、一記事につき一三・五字以内で収まる形に生成させるのにAIをテスト採用。複数の候補を出させた。一七年夏から、人間が見出しをつける時間を短縮するための補助ツールとして活用している。

 海外でも「AI記者」が登場している。ワシントン・ポスト紙はリオデジャネイロ五輪報道で、試合結果やメダルの獲得数などの短信を担当。選挙報道や地域スポーツにも活用の幅を広げた。AP通信は決算リポートの作成にAIを活用しているが、一六年七月、野球のマイナーリーグの記事作成にも使うと発表した。

 記事の自動作成以外では、会員制交流サイト(SNS)上に投稿された文章や写真から、AIが事件・事故情報を抽出して報道機関向けに配信するサービスも。運営するスペクティ社によると、報道機関では本紙を含めて国内外の百十六社が導入している。本紙記事に見出しを付けるAIをつくった岩間さんは「究極的にはテーマや設定を与えるだけで、小説をつくれたら」と未来図を描く。

◆人物述語把握を(A) これからも改善(整)

 <静岡大の狩野芳伸准教授の話> 見出しを作るには、記事の重要な部分を把握し登場する人物や事柄の関係性を踏まえて文字数内にまとめなければならない。そのためには主語述語の関係や名詞の意味などの正確な分析が必要だが、今のシステムはまだ不十分で、使えるものとそうでないものが混じっている。今回は第一歩にすぎないが、人間のような言葉の理解と生成を最終目標に、少しずつ改善していきたい。見出しに限らず、多くの問題には必ずしも正解がない。高度な作業や判断は人間が負い、コンピューターがそれを助けることで、よりよいものを作れるのではないか。

◆AI見出しに驚く(A) 喜怒哀楽どこまで(整)

 <山元正・中日新聞東海本社整理部長の話> AIが新聞の見出しをつけるとは、ついに時代もここまできたか。瞬時に50の候補を考え出す能力には驚くが、まだ事実関係が間違っていたり、ニュースのポイントを捉えられていなかったりなど精度は低いといえる。見出しとは事件の背景や経験、価値観を考慮し、整理記者が悩みながら10字以内に表現する。そこには喜びや悲しみなどの人間感情が込められているが、AIにそれが可能だろうか。囲碁将棋で人間が完敗した今、AI見出しがどこまで進化していくのか見守りたい。

(相沢紀衣、飯田樹与)

 

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