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<世談> 人生フルーツ

 狭い庭をどうするか、悩んでいた。植木か、花壇か、はたまた…。ある日、実家の母がキュウリの苗をくれ、少しずつ野菜の畝が増えていった。四人の子を食わせるために、まずは食えるものを−。自分なりには、それで納得した。

 間違ってない、と教えてくれたのは、キッチンガーデンの提唱者で建築家の故津端修一さんだった。ドイツで学んだ「菜園のある暮らし」。自ら設計した愛知県の高蔵寺ニュータウンで英子夫人と実践していた。

 八十八歳で一人、太平洋をヨットで航海し、シケに遭遇して水とバナナで生き延びた経験を「ぬくぬくと居心地のいい中で生きているだけでなく、時には生死を間近に感じるような体験も必要です」と語った。

 「僕は年寄りが元気になればいいと思ってます。社会保障を受けなくても健康で死ぬまでピンピンしている人を増やす」。言葉どおり一昨年、庭で草取りをした後、部屋で休み、そのまま九十歳で永眠された。

 人生で師と出会う機会はまれだが、一期一会になった津端さんには一瞬の出会いの中で、人生の指針を頂いた気がする。夫妻を追ったドキュメンタリー映画「人生フルーツ」が来年一月、公開される。

 (編集委員・秦融) 

 

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