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生活部記者の両親ダブル介護

(48)調理を忘れた母 父の主食はアイスだった

ささやかながら、母への猛暑見舞いです。おいしい時、うれしい時に目を大きくするのは昔と変わりません。この後、父にもお裾分けしました

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 溶ける前に父(81)と母(82)に届けなくてはならない。気温四〇度を記録した日、病院近くのコンビニでアイスクリームを求めた。選ぶのが難しい。ナッツや果物の入ったものはだめ。具材が口に残っては誤嚥(ごえん)のもとだ。最近は品数が多く、普通のバニラがなかなか見当たらない。

 昔は、アイスクリームの王者と言えば「レディー○×」だった。母の隙を見て買い物かごにしのばせたものだ。だが、成功率は0%。そりゃ重いもの。その代わり、母は一個五十円くらいのカップアイスを買ってくれた。わが家の冷蔵庫には冷凍庫がなかった。家に着くとすぐ食べる。ふたの裏をなめる癖は、母から学んだに違いない。

 まだ凍ったところに溶けたのを絡め、木のさじで母の口元に運ぶ。「お母さん、おいしい?」。妻が問うと、少し驚いた表情でうなずく。練乳のかかったかき氷も少し食べてもらう。「おいしい」と言う代わり、母はカップを手でつかもうとした。

 二十メートル先の部屋にいる父にもお裾分け。だが、のみ込む力の弱い父には唇に載せる程度。腕をつかまれても、全部はあげられないのです、と言いつつ、二度、三度と同じ作業を繰り返した。

 老老介護の後半、父の主食はアイスクリームだった。まだ買い物ができた母は、父の言う通りアイスをたくさん買ってくる。そのわけを父に聞くと「あれが食えるか」。食卓にはいつ作ったか、おかゆや魚があやしい香りを放っている。料理は母まかせの父は生活力ゼロ。食事の宅配も調べたが、家の中で腐らせては元も子もない。母が認知症を発症する中、遠距離介護で日々の食事を案じることは困難だった。

 (三浦耕喜)

 

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