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生活部記者の両親ダブル介護

(47)大雨の七夕 天の川越え病室デート

雨の日の七夕デート。お祝いは昔、父が愛飲していた「小町」です。父の表情が輝きます。味わえるのは相変わらず数滴ですが…

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 金曜日の午後だった。父(81)と母(82)のいる病院から電話があった。看護師長からだ。父の呼吸が乱れ、血圧も最高で六〇に落ちたという。心臓の力が弱っているのだ。三八度の熱もある。「心電図の常時モニターを始めます」と師長は告げた。

 覚悟の時が近づいたかと身構える。至急病院に向かった弟から連絡。最高血圧は八〇−一〇〇まで戻ったが、なお不安定。

 残念だが作戦中止か…。翌週は七夕だった。織り姫とひこ星が会う日だ。それにならって外出許可を得て、短時間でも二人で家で過ごしてもらおうと考えたのだ。リクライニング型車いすで乗れる福祉タクシーも二台予約した。父のたんの吸引の間隔や、車いすに乗せられる時間も試験を重ねたところだった。

 当日は大雨だった。天の二人もさぞ残念だろう。「だったら院内で会わせましょう。先生もいいって」。看護師さんの言葉が温かい。しかも父の方を動かして母の個室に連れて行くという。ヒヤヒヤ見ている間に看護師さんは父を車いすに移し、点滴袋を手に移動を始めた。

 父と対面した母は、風呂から上がったぬれ髪姿。関節をほぐすように二人の手をつなげる。もういつ何があるか分からない。長年の疑問をぶつけた。「お母さんはなぜこの人を夫に選んだのですか?」。母は答えた。「やすかったから」

 「安い?」と弟と笑ったが、「やす」は父の呼び名であることに気付く。「やすさんだったから」。そう言って母は父を選んだのだろうか。豪雨の七夕。天の二人は会えなかったが、地上の織り姫とひこ星は会えた。

 (三浦耕喜)

 

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