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生活部記者の両親ダブル介護

(40)春が来た 一輪の桜に母ほほ笑む

妻から桜の花を渡される母。手で触れながら、しげしげと眺めておりました

写真

 満開の桜並木の下で、自転車のペダルをこぎながら「うーん…」と考え込んでいる。今年はどうやって父(81)と母(82)に桜を見てもらおうか…。

 父母とも同じ病院に入り、徒歩五分に市民公園の桜がある。絶好の環境だが、父母とも座る姿勢が保てず、普通の車いすで連れ出すのはこわい。心臓の近くに輸液を入れている父は、ベッドから離しにくい。

 昨年は、枝を折ってくることも弟と考えた。未遂ながら一部からの指摘もあり却下。ならば仕方あるまい。今年はスズメに手伝ってもらうことにした。

 桜の蜜はスズメも好物だ。だが、行儀の悪いことに、蜜を食べるのに、スズメは花の根元をちぎり、食べたら捨てる。なので満開の木の下には、形を保った花が落ちている。妻はできるだけきれいなものを選び、透明なポリ袋に入れた。

 病室に入るなり、引き伸ばした桜の写真と、花の入ったポリ袋をかざして言った。「お母さん、春が来ましたよ」。何事かという表情の母に、妻は袋から一輪の花を取り出し、母の手に触らせた。「あのね、お母さん。まだ三月やのに桜が満開なの。今日は暑いくらい」

 ようやく理解した表情の母。「お母さん、こういうのが、いっぱい咲いとるんやよ」と写真を掲げて小躍りしてみせると、母は少しほほ笑んだ。

 介護生活に入って、年中行事や季節の習わしが身近になった気がする。父が通ったデイサービスでも、時候に合わせたイベントをスタッフが工夫していた。では、今年の桜に対する父の反応は? それは次回に。

 (三浦耕喜)

 

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