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生活部記者の両親ダブル介護

(34)新年の風景 ベッドから「孫にお年玉」

2人の孫に囲まれる父。三浦家の先祖がどう暮らしてきたか、語り残したいことがたくさんあるようです(一部画像処理)

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 老いとは避けられない人間の定めとはいえ、やはりさみしい。ついに、実家で行う元日の小宴から、父(80)も母(81)もいなくなってしまった。

 昨年、母は病院で寝たきりだったが、父は施設から連れ出せた。今年は父もあごの手術とリハビリで、病院で年を越した。

 せめて孫である弟の子の顔を見てもらおう。元日の朝、弟一家と父母を訪ねる。まずは母の病院へ。突然の勢ぞろいに驚く母。弟が母の耳元に高校生と中学生の男の子二人の名前を告げる。「お正月のあいさつやよ」。理解しているか定かでないが、孫を見る目が見開いている。促されて孫二人は近況を報告する。「ラグビーを始めたよ」「今度、野球部に入ろうと思う」

 その間、私は「祖母より」と記したお年玉袋を二つ取り出す。「お母さん、お母さんの手から、この子たちに渡してあげてください」。右手で袋をつかもうとする母。何回か布団の上に落としながら、中指と人さし指の間で震えている袋を、二人はそれぞれ受け取った。

 別の病院に入院する父にも会わせなくては。慌ただしく父の元へ行く。父も驚いた表情だったが、久しぶりの孫の来訪に喜んでいる。滑舌が悪く、話の半分も聞き取れないが、普段になく冗舌だ。ここでもお年玉を手渡してもらう。

 実家に戻り、弟一家と黒毛和牛のしゃぶしゃぶで新年をことほぐ。車いすのままでも動きやすいように弟が片付けた居間が広く感じる。もうこの先、ここで父の、母の声を聞くことはあるのだろうか。ののしり合っていた声すら今は懐かしい。

 (三浦耕喜)

 

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