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生活部記者の両親ダブル介護

(21)ササ飾りの思い出 何度も「きれいやねえ」

「ファン」と言ってくれる読者から手作りのササ飾りを頂きました。母のもとに持参し報告しました

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 母(81)と七夕を楽しめたのは初めてかもしれない。私のファンと言ってくれる読者の六十代女性から「ササ飾り」が届いた。拙著「わけあり記者」(高文研)をたたえ、「最高の新聞社です」「第二弾、第三弾が出版されますよう」等々、短冊に祈りがつづられている。

 母に見せびらかすべく病院へ。花火やアサガオの飾りをあしらったササに「きれいやねえ」を連発する。よかった。母に恥をかかせた罪をあがなえたか。

 小学一年か二年だったか、クラスの皆で短冊を結わえた。授業参観があって、母たちはササ飾りに群がった。母も私の短冊を見つけたが、たちまち笑顔が曇る。周りのお母さん方もクスクス笑っている。私は短冊に「お父さんとお母さんがケンカしませんように」と書いたのだ。

 子どもでも「なぜ結婚したの?」と思う両親だった。小爆発を繰り返し、辛抱となだめすかしで繕ってきた家族だった。だが、始まった介護は家族の抱える問題を容赦なくえぐり出す。手際が悪いとなじる父に母は十倍言い返す。既に認知症を発症していただろうが、屈辱の記憶は鮮明だ。今で言うDVに苦しめられた恨みをまくしたてる。

 母の繰り言は中学の時から聞かされていたが、初耳の話もある。おお、これは、年寄りの悪口や不可解な行動にも、そこに時代を生きてきた証言を見いだす「介護民俗学」の好機ではないか。私はリュックからノートを取り出す。「ちょっと待ってください、お母さん。おなかを蹴られたのはどこにいた時のことですか?」「それで僕の頭に仏壇が飛んで来たのですね。覚えています」。母の罵詈(ばり)雑言は、次第に夫婦の歴史をたどる静かな「証言」になった。

 (三浦耕喜)

 

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