トップ > 特集・連載 > 生活部記者の両親ダブル介護 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

生活部記者の両親ダブル介護

(13)戦争の話を聞く 老いていく“記憶の器”

病院のスタッフが手作りしたひな人形と一緒に。母もかつての「少国民」でした

写真

 大ヒットとなったアニメ映画「この世界の片隅に」を見た。五回も見た。十八歳で広島県呉市に嫁いできた女性「すずさん」を主人公に、戦中・戦後の暮らしを丹念に描いた傑作だ。

 介護のコラムに、なぜ映画の話なのか。母(81)も映画に出てくる少女「晴美ちゃん」と同じ、戦争を生きた「少国民」だったことに思い当たったからだ。

 終戦当時、母は九歳。記憶があるには十分な年齢だ。幼いころ、私が何かほしいと駄々をこねると、「ぜいたくはいかんよ。戦争中は何もなかったんやで」と諭されたことを思い出す。だが、まとまった話として戦争のことを聞いた記憶がない。

 調べると、母の故郷、鹿児島市も空襲に遭っている。インフルエンザ対策で引き続き長居はできないが、母に問う。「戦争の時の話を聞きたいんだけど」「せん?」「せ・ん・そ・う」

 話がかみ合わない。「空襲があったの?」「くう?」「お母さんも疎開したんですか?」「…」「そ・か・い!」

 防空壕(ごう)は理解できたようだが、『子どもながら素手で掘った』という話になっている。意味のある話として聞き出せたのは次の内容くらいだった。

 食事は、米ではない「くちゃくちゃしたもの」を茶わん三分の一ほどだけ。食料と交換するためにお気に入りの洋服を脱がされ、ぼろぼろの服を着せられた。それを着て学校に行ったら、男の子たちがばかにして服を引っ張られ、破かれた。

 天井を見つめる母の目尻から涙が流れる。少女が見た本当の戦争の記憶。その記憶の器が目の前で老いていく。

 (三浦耕喜)

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索