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生活部記者の両親ダブル介護

(11)誕生日ハム 「これを待っとったんや」

ハムを食べる父。足腰は弱っても、食欲は旺盛です

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 母(81)に誕生日がきた後、父(80)にも誕生日がきた。父は母とは一年と二週間ほどの年下。今度は父に祝意を伝えるべく施設へと向かう。

 正月にわが家での小宴で用意した「マアエッポン」のウインナーに味をしめたらしい。お祝いは何がいいかを問うた事前リサーチに、父は「○○ハム」と、今度は商品名を指定した。岐阜県で生産されている名物ハムだ。手には入れたが、どう食べさせようか。思案している間に、妻はハムをいちょう切りにして食品容器に詰めた。

 父のいる施設でもインフルエンザ対策で面会制限がある。居住スペースの二階には立ち入れない。だが、車いすに乗れる父は一階に連れてきてもらえる。エレベーターが開き、片手を振りながら現れた父。玄関脇の談話スペースで祝意を込めて父に言う。「ハム持ってきたよ」

 「これを待っとったんや」とフォークでつつき始める父。「お父さん、お誕生日おめでとう」と言う妻の声も聞いていない。ハム一本の半分くらいを用意したはずだが、父は完食した。

 内装業であちこちの現場を回った父は、各地のグルメに詳しい。家族旅行も兼ねて連れられたことも。岐阜県白川村の合掌造りの宿にも泊まった。その時の現場は村役場。「ここ村長さんの机やぞ」と机に乗って天井の壁紙を張る父。母も弟も私も壁紙ののり付けを手伝った。「○○ハム」も、私はそういう中で初めて口にしたのかもしれない。

 暖かくなれば面会制限も解ける。父を外に連れ出せる。母のいる病院に行こう。久しぶりに家族がそろう。

 (三浦耕喜)

 

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