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生活部記者の両親ダブル介護

(10)誕生日カード スタッフの心遣いに感謝

病院のスタッフが手作りしてくれたカードを胸に。母は81歳になりました

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 お気付きになった方もいると思うが、母(81)の年齢がひとつ増えた。つまり今年に入って誕生日が来た。週末と重なり、祝意を伝えるべく車を走らせる。

 親不孝を恥じるばかりだ。母親の誕生日もうろ覚えだった。「○日、いや、その翌日だっけ?」という程度で四十数年を生きてきた。東京にいた時も、だいたい、その辺で何か贈っとけばいいだろう、くらいに。

 今ようやく、誕生日をはっきり言える。介護保険などの手続きで、数十回は母の誕生日を記してきたから。子どものころ、とっておきのサイダーの栓を抜きながら、母は「おめでとう」と祝ってくれた。では、きちんと母の誕生日に「おめでとう」と言えていたのかどうか。言ったと思いたいので記憶を探る。

 一年で最も寒い時季。インフルエンザ対策で面会には制限がある。お年寄りばかりの病院のこと。ウイルスを持ち込まないよう、外部と遮断するのが基本だ。面会できるのは必要最小限の用向きと人数、そしてごく手短に。なので、着替えを届けに一人で向かう。

 消毒液で丹念に手をもみ、マスクをかけて母のベッドの脇に立つ。「お母さん、今日はお誕生日ですね」。マスク越しだからだろうか。ややあって母は反応する。「耕喜か…」

 手早く洗濯物を回収し、着替えを棚に入れる。物品の持ち込みも控えなければならない。花もプレゼントもない誕生日。病院のスタッフが手作りしてくれたお祝いカードに救われる。「お母さん、お誕生日おめでとう」。そう言うと母は答えてくれた。「ありがとう」

 (三浦耕喜)

 

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