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生活部記者の両親ダブル介護

(8)正月に一時帰宅 「マアエッポン、食べたい」

久々の自宅で雑煮を食べる父。餅は切り分け、トロトロになるまで煮ました

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 父(79)のため、正月にはウインナーを用意した。施設から一時帰宅させて行うわが家の小宴で、何が食べたいのか問うたのだ。

 「『マアエッポン、マアエッポン』って、テレビでやっとったハムがあるやろ」との趣旨の話をする父。聞き取った関西出身の妻も名古屋弁であろうと類推し、ただちにネットで探し出してくれた。「もう一本、もう一本」と、ついつい手が出るというローカルCMで知られたハム会社のウインナーだった。

 食膳には刺し身などもそろえる。かみ切れないかもとネギトロも用意したが、サーモンやマグロを次々平らげていく。おせちの昆布巻きまでかみ下した時には、心配するのもやめた。

 久しぶりになめた酒に興に乗った父は、床に座らせ腰を落ち着かせろとせがむ。弱った足腰では立ち上がれなくなるので、いすに座らせていたのだ。心のどこかでアラームが鳴る。

 父の介護が始まる前もそうだった。床に座ると自力で立てなくなったのだ。最初は座卓にしがみつきながら何とか立ち上がっていたが、次第に時間がかかるようになる。母も手助けの仕方が分からない。尿意をもよおしても、間に合わなくなることも出始めた。「赤子と同じ」と電話口で嘆く母。「いいや、赤子の方が小さくて楽やわ」と。

 そんなことを思い出しながら父をなだめる言葉を探す。何回かの問答の後で父は言った。「ええやないか。久しぶりの家やで」。それもそうだ。今日は弟もいるから大丈夫か。第一ここは父の家だ。父の好きにしていいのだ。弟と父の両脇を支えながら、腰を下ろさせた。

 (三浦耕喜)

 

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