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生活部記者の両親ダブル介護

(6)ふるさとの力 かるかんを「たもる」

ベッドの母に呼び掛ける母の姉(中)と妹。古里の言葉は響いたようでした

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 認知症になると新しいことは頭に入らないが、昔のことは命に刻まれているという。そう聞いてはいたが、本当だった。

 母(80)の姉と妹が、入院が長引く母を案じ、鹿児島から出てきてくれた。車で案内する間、状況を説明する。依然として主な栄養は首からの点滴で補っていること、随分やせたこと、話がかみ合わないことなど。近ごろ、息子の名前がなかなか出てこない時もある。ショックを受けないようにと思った。

 だが、母は反応した。姉が現れると、薄目だった母は目を見開いた。「私はだれね?」の問いに、「ねえさん…」とつぶやく。傍らの妹にも名前で呼び掛ける。姉が母に顔を寄せて声を張り上げた。「あんた、たもりなさいよ。たもらんと元気になれんよ」

 タモる?と思ったが、文脈で「食べる」の意味だと理解する。母にとっては懐かしい鹿児島の言葉だ。うなずく母。姉たちは土産に「かるかんまんじゅう」を置いていった。後日、小さくちぎりながら食べさせると、母は一個の半分ほど平らげた。

 今は要介護度では母の方が進んでいるが、最初に床に伏しがちになったのは父(79)だった。きっかけは腰痛になったこと。それまでは二階で寝ていたのだが、トイレに行くのに階段を下りることもつらいと、ベッドを一階に移した。

 腰痛はしばらくして治まったが、父は寝床を二階に戻すことはなかった。車も手放し、たまに庭に降りる以外は、ベッドと隣の居間を往復する毎日だった。「お父さんが寝てばかりおる」。母が曇った声で電話をかけてくるようになった。

 (三浦耕喜)

 

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