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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 作詞家の阿久悠さんは、自らの作品にこんな思いを持っていた。<何十年かたった後に、時代を思い出す最初の扉が歌であればいい>。テレビの番組で語っている。世の中にとって歌とは何かという問いへの一つの答えでもあるだろう

▼その言葉を思いつつ、安室奈美恵さんが歌ったたくさんのヒット曲のタイトルを眺める。平成という時代の扉であり、表札のようだ

▼バブルがはじけた。右肩上がりの時代は過去のものになろうとしていた。大人の世界が揺らぐ中、ロングの茶髪に細い眉、厚底ブーツといったいでたちの少女たちは、自らのファッションや生き方を肯定しようとしていた

▼でも、どこか不安なのだと憂いを歌った「SWEET 19 BLUES」。影を感じさせる安室さんゆえの力が歌にあった。あの頃、カラオケで歌いながら、自分のことだと思った方も多いのではないか。「CAN YOU CELEBRATE?」にも「Don’t wanna cry」にも、聞けば頭に浮かぶ時代の空気がある

▼引退の十六日が迫ってきた。惜しむ声が各地でこだましている。出産、離婚を経てから、ライブ中心の本格派として人気を集め続けてきた。安室さんの強さを思う人も多いはずだ

▼平成の終わりまでずっとかっこよかった。思い出の扉をいくつも残した。歌の平成の終わりを感じさせるような歌姫引退である。

 

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