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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 作家の林真理子さんは大学時代、四十社以上の就職試験を受けた。すべて落ちたそうだ。届いた四十数通の不採用通知は、束ねてリボンで結び、宝物にしていた。数年前のベストセラー『野心のすすめ』で披露している

▼野心を車の前輪に、努力を後輪にして、挫折を乗り越えてきたとこの自伝的な本で書いている。全社不採用の悔しさは、野心を持つための大切な原動力になったようだ

▼林さんが味わったような屈辱感も、ひょっとしたら過去のものになるかもしれない。経団連会長が先週、採用活動に関し指針廃止の意向を明らかにした。ルールを守らない企業も多いという

▼日本独自の新卒一括採用の下では、在学中の機会を逃すと、就職活動は難しさを増す。経団連会長の考えは、通年採用の欧米型に近づくことか

▼ただ、そうなったときの弊害も、ありそうだ。就職活動の時期が早まれば、学業が圧迫される。企業側も過熱し、特に中小企業は激しい人材獲得の競争に、さらされかねない

▼欧米型もすべてばら色ではない。海老原嗣生(つぐお)著『お祈りメール来た、日本死ね』で知ったが、未経験者の就職が難しかったり、失業の壁も低かったりだ。新卒一括採用の長所は欧米型の短所の裏返しでもあるだろう。屈辱と野心が表裏一体になるように、ばら色の面だけでは成立しない。議論する上で、忘れてはいけない点ではないか。

 

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