トップ > 社説・コラム > 中日春秋一覧 > 記事

ここから本文

中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 偏西風に吹かれ、季節になれば、前線が列島の上に現れる。起伏に富んだ地形と周囲が海という事情も手伝って、わが国は風の宝庫なのだそうだ

▼風にまつわる言葉や呼び名が無数にある。日本人の喜怒哀楽にも連なる数々の風を集めた倉嶋厚監修『風と雲のことば辞典』に、「仇の風」という古い風が紹介されている

▼仇は「あた」と読んで敵や害、悪さを表す。船の航路を妨げる<難風>なのだそうだ。『宇津保(うつほ)物語』に、この仇の風が遣唐使の船を無慈悲に沈め、漂泊させる場面がある。平安時代から船乗りに恐れられてきた風だろう

▼台風21号は去ったが、関西空港などに残された傷が大きい。開港以来という強い風がもたらした害に驚き、流されたタンカーが、空港連絡橋にぶつかる光景に日本人が、古くから戦ってきたであろう風の怖さを思い浮かべる。この風と低気圧による吸い上げで起きた高潮が猛威をふるった

▼高潮もまた、年来の仇敵(きゅうてき)だ。五千人超の死者・行方不明者があった伊勢湾台風では、被害の大きな原因になった。今回、沿岸ではコンテナや自動車も押し流したようだが、伊勢湾台風で貯木場の材木が人と家を襲ったのを思い起こさせる

▼伊勢湾台風は、災害対策基本法の制定を促した。災害への備えが変わる転機となった。それでも、今回の惨状をみれば、古いかたきも力を増していると思わされる。

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索