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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 遠い昔に撮影した家族写真。これと同じ場所、構図で同じ家族を撮影して、二枚を並べてみる。たとえば、赤ちゃんを抱っこした若いお父さんの写真。それが今の写真では、ひげづらの大男に渋い顔でお年を召したお父さんが、抱きついている。噴き出す

▼「THEN(あの時) AND NOW(今)フォト」とか「タイムスリップ写真」というそうだ。写真の変化が楽しい。その上、この家族にも二枚の写真の間には泣いたり笑ったりの日々があったにちがいないことを想像すれば、少々感じ入ったりもする

▼「あの時」に使った写真フィルムが消えかかっている。富士フイルムは一九三六年から販売している白黒フィルムの出荷を今年十月をもって終了すると発表した

▼デジタル写真の時代にフィルム、ましてや白黒となれば、やむを得ない時代の流れか。最近では見向きもしなかったくせに出荷終了と聞き、とたんに寂しくなる

▼出荷のピークは六〇年代。その世代の方ならば、どなたにも大切な白黒フィルムの家族写真があるだろう。白黒にはカラーにない味と思い出を増幅させる色がある

▼「カラーで人を撮ると服を撮ることになる。白黒で人間を撮ると魂が撮れる」。カナダの写真家テッド・グラント氏の言葉という。白黒フィルムを製造する企業は他にもあり、完全に消えるわけではないが、色あせぬことを祈る。

 

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