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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 戌(いぬ)年でもあり、おめでたき、江戸伝統の「笊(ざる)かぶり犬」を買い求めた方も、いるのではないか。犬が笊をかぶせられ、キョトンとする姿がかわいらしい。この「笊犬」、笑いとおおいに関係がある

▼犬が竹笊をかぶっている。その様子を漢字で書けば竹カンムリに犬。「笑」という字に似ているのでそれをかたどって縁起物にしている。漢字学者の白川静さんによれば、その字解きは全くの俗説だそうだが、犬と「笑」を重ねた、いにしえのしゃれっ気がなんともいえず、楽しい

▼笑う門には福きたる。笑いの効用について、あらためて説明するまでもあるまい。ストレス軽減や免疫力向上。特段おもしろいことがなくとも、作り笑いでも心身に良い効果があると聞く

▼井上ひさしさんの笑いについての説を思い出す。人間には生まれながらにして悲しみや苦しみ、恐怖が備わっているそうだ。なるほど悲しいことはほうっておいても起きる

▼笑いはどうか。井上さんの説によれば人間の内側にもともと存在しない。人間が作りだし、外から与えられることによってはじめて、笑いとなる。「笑いとは人間が作るしかないもの」−。悲しさや苦しさを忘れよう、あるいは、忘れさせたいと人が考え、こしらえる笑いが、ありがたく思えてくる

▼この「笊犬」もどなたかが、誰かをおもしろがらせたいと知恵を絞ったか。笑い多き年に。

 

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