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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 重いモノを二人以上で持ち上げるには掛け声がないとタイミングが狂い、うまくいかない。掛け声はだいたい「いっせいのせい」や「せーのっ」か

▼友人がある掛け声について腹を立てていたことを思い出す。友人の母親が亡くなり、棺(ひつぎ)を運ぶとき、葬儀会社の若い方が「せーのっ」の掛け声を使ったそうだ。その掛け声に、母親が引っ越し荷物か何かのように扱われた気になったという。悪気はなかろうが、こういう場合、「せーのっ」の掛け声は、目の前の悲しみの状況とはうまく釣り合わぬ

▼「せーのっ」に似た話かもしれない。ごみと呼ばないで。熊本県社会福祉協議会が発行する被災地ボランティア向けのガイドブックによると被災によって汚れていても家財道具をごみと呼ばれたくないと思っている

▼よく分かる。テーブル、たんす、学習机。泥まみれでも、壊れていても、そこには思い出と家族の会話がしみついているはずである

▼捨てなければと分かっていてもそれをごみと呼ばれることはやりきれないだろう。ただでさえ心の傷ついている被災直後である

▼先の集中豪雨に襲われた九州北部の被災地にこの週末、大勢のボランティアが集まった。ありがたい。被災地を気遣う善意の人にごみと呼ぶ人は少ないと思うが念のため。それは家財道具という呼び方さえぶっきらぼうすぎる別れがたい「家族道具」である。

 

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