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社説

人工知能と人間 技術に倫理の裏打ちを

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 人工知能(AI)と私たちはどう付き合うべきか。科学はもちろん、政治や社会がよく考えねばならない。使いこなせるか、暴走をどう止めるのか。倫理を持った人間が手綱を握り続けるしかない。

 来日したドイツのメルケル首相と慶応大学学生らとの討論会=写真=に、ヒントの一つがあるようだった。

 AI活用について問われたメルケル氏の答えは「どこまで人は、その人らしさを保てるか」という問い掛けで始まった。

 彼女はこう説く。「義足をつけたり臓器移植を受けたりしても、同じ人間のままだ。しかし、私が脳にチップを埋め込み、より早くうまく考えられるようになっても、同じ私と言えるだろうか。私の人間性はどこで終わるのか。AIのおかげで遅かれ早かれ、他人の考えていることを読み取れるようになるだろう。しかし、誰にでも人に言えないことはある。他人とすべてを知り合ってしまうことで、殴り合いや殺し合いが増えるかもしれない。AIに倫理的な歯止めをかけなければならない」。国の喫緊の課題である。

 東京電力福島第一原発事故後、哲学者や教会代表らも加えた倫理委員会を設置し、脱原発を決めた時の対応に通じる倫理観である。

 ドイツ政府は、インターネットやAIを活用して製造業をデジタル化する「インダストリー4・0(第四次産業革命)」構想を進めている。メルケル氏の訪日は、この分野で日本との連携を深めることも大きな狙いである。

 「歯止め」は進むのか。欧州連合(EU)は昨年、インターネット上の個人消去などを規定した一般データ保護規則を施行した。一方で、殺人ロボットなどAIの軍事利用に対しては有志研究者らが反対を表明しているが、開発を優先させたい日本政府は規制に消極的だ。

 技術には常に長所も短所もある。倫理の裏打ちが必要だ−物理学者、プロテスタントとしての顔も持つメルケル氏からのメッセージ。開発に前のめりな中でも忘れてはなるまい。

 

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