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社説

集ってつながる幸せ 週のはじめに考える

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 ひとつ屋根の下で人と人がつながる。幸せを感じませんか。他人とのかかわりが希薄になったといわれる今、そんな地域の輪の大切さを見直したい。

 パッと弾(はじ)ける笑顔に、こちらも優しい気持ちで満たされました。

 富山市でNPO法人「このゆびとーまれ」が運営するデイサービス施設を訪問した時のことです。迎えてくれた知的障害のある女性職員の笑顔が忘れられません。

 施設で利用者の世話を焼いています。必要とされるうれしさと自信にあふれていました。

 民家を使った温かみのある施設です。デイサービスは、例えば介護保険制度なら対象は高齢者になるのですが、ここは違います。

 利用者は赤ちゃんから高齢者まで、障害の有無に関係なく一緒に過ごしています。子どもたちの笑顔は高齢者を元気にする=写真。障害者は施設の利用者としてだけでなく貴重な働き手でもあります。

 高齢者は介護施設、障害者は障害者施設、子どもたちは学童保育などで過ごす。これが行政の制度です。でも、みんな地域で生活する住民です。制度が縦割りのために、知らぬ間に住民も分断されて生活していたと気づきました。

 ケアが必要なら誰でも受け入れる。もっと顔を合わせてつきあえる場があることが自然です。

 そう確信してこの施設を始めたのが看護師でもある理事長の惣万佳代子さんです。一九九三年、同僚の看護師二人と勤務先の病院を辞め私財を投じて開きました。

広がる富山型の共生

 その理由は明快です。「看護師は倒れている人を、名前が分からなくても助けます。福祉もそれと一緒だと思ったんです」

 「行政からはなんで制度に当てはまったことをしないのかとすごく怒られました。でも私たちは制度は人間に合わせるもの、反対じゃないかと考えました」

 辛抱強く行政を説得し制度の縦割りの壁を破りました。施設は財政支援を得ただけでなく障害者の就労モデルにもなっています。

 この共生型施設は「富山型」と呼ばれ、今や全国で二千事業所を超えています。惣万さんと同じ思いの人が各地にいる証しです。

 行政制度の外で「つながる場」づくりを目指す動きもあります。地域の子どもたちに温かい食事や居場所を提供する「子ども食堂」の活動は二〇一二年が始まりとされ、この六年で全国で二千二百カ所を超えた。年間延べ百万人以上の子どもたちが地域のぬくもりに包まれています。

 社会では単身世帯が増え家族の機能は弱くなりました。地域コミュニティーも消え、非正規雇用の増加で会社という組織への帰属意識も薄まった。都市部では保育所建設が地域で反対される。隣人との断絶が進み貧困が広がり分断の溝を深くしています。

 息苦しい限りです。

 「人々の関わりが希薄になる中、接点を増やしたいとの思いが広がった結果」。子ども食堂の実態調査をした社会活動家の湯浅誠さんは、その急増ぶりに驚きます。人々の心に積もっていた分断への危機感が各地で呼応し、今や地域の人が集う場になっています。

 人がつながるには、支える側の存在だけでは成り立ちません。もうひとつ大切な条件があります。困っている人が「助けてほしい」と堂々と声を上げられて初めてその手をつかむことができる。

 ところが、今は他人の困難に思いを寄せる余裕のない自己責任ばかり問われ、助けを求めづらくなっています。それが心配です。

 惣万さんの元へは実にさまざまな人が気兼ねなく支援を求めてきます。依存しない生き方なんて誰もできないはずです。「頼り頼られる関係」。これが自然です。

もっと頼っていい

 だから、周りの人にもっと頼っていい。頼られてうれしそうな惣万さんを見て強くそう思います。

 生身の人間なら相手の体温を感じ、気持ちを共有することで安心を得ます。今後、外国人が増えれば一層、それが大切になります。

 つながるための強い連帯は地域の立て直しから始まる。そう考える人は増えていると信じたい。

 「このゆびとーまれ」を後にしようとした時、一年生でしょうか黄色の帽子をかぶったランドセル姿の小学生が来ました。これから子どもたちも加わり、施設は最もにぎやかな時間を迎えます。みんなの笑顔が浮かんでくるようです。

 

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