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社説

株価急落 為政者たちへの警告だ

 世界の市場で株価が急落している。底流には米中貿易摩擦を不安視した市場の動揺がある。「自国第一主義」が自らも傷つけるという現実を米トランプ大統領ら指導者は改めてかみしめるべきだ。

 急落のきっかけは米国で物価関連指数が上昇。インフレが進んで企業業績が悪化するとの見方が広がったことだ。問題はそのインフレ不安の背景だ。

 トランプ大統領は先月、対中国貿易制裁の第三弾を発表した。これで米国が中国から輸入する製品のほぼ半分が影響を受けることになった。制裁は追加関税で、輸入製品の価格は当然上がる。米国では家電などさまざまな消費財を中国からの輸入に頼る。中国製品に重い関税を課せば物価が上がるのは当然だ。さらに大統領はイランの原油への制裁も発表し価格上昇の原因をつくった。つまり米国のインフレ懸念は自国大統領による自作自演ともいえる。

 制裁が引き起こした貿易摩擦で景気の土台が緩んだところに、長期金利上昇という引き金がひかれ株価急落を引き起こした。投資家の不安心理を数値で表す米VIX(通称・恐怖指数)も上昇し、先行き不安が渦巻いている。

 日本でも土台は緩んでいる。高値で推移していた株価はあっけなく急落。日本の場合、日銀が年六兆円を目標額とするETF(上場投資信託)の買い入れなどを通じて事実上、株価を支えてきた。急落は株価水準が実態に合わずバブル気味だったことを裏打ちした形だ。株価低迷は企業の含み益を減らし財務を痛める。それが賃金や雇用の抑制につながり暮らしを直撃する恐れがある。

 急落は自国の利益のみを追求する視野の狭い政策が、結局はブーメランのように跳ね返ることを浮き彫りにした典型例である。国際社会は米大統領に対し、「米国第一主義は米国自身を傷つける」という事実を何度でもアピールする必要がある。インドネシアで始まった二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議など一連の国際会議は、それを実行する格好の舞台となるはずだ。

 一方、国内の経済状況をみると、副作用が顕在化する長期の大規模金融緩和や、借金に依存した財政政策が確実に経済地盤の緩みを引き起こしている。それはいつ投機の的になっても不思議ではない。今回、株式市場で起きた大きな動揺は、経済の常識やルールを無視した国内外の為政者たちへの強い警告でもある。 

 

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