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社説

過労死対策 ちぐはぐな政府の姿勢

 政府の過労死防止対策大綱の見直し案が公表された。「過労死ゼロ」へ取り組みが強化される。ところが国会で審議中の「働き方」関連法案は過労死増が懸念される。根絶への姿勢に疑念が湧く。

 長時間労働を防ぐ“切り札”といわれる制度がある。「勤務間インターバル制度」だ。

 終業から次の始業まで一定の休息時間を設ける。こうすれば働く人は確実に毎日、休息が取れる。過労を防ぐには月や年間の労働時間規制だけでなく日々の労働時間規制が不可欠だからだ。

 欧州連合(EU)は十一時間連続の休息時間を加盟国に求める。日本での導入企業は1・4%だ。

 大綱の見直し案には、二〇二〇年までに導入企業を10%以上とする数値目標を掲げた。制度の周知も課題で、知らない企業の割合を20%未満とすることも定めた。

 さらに高い目標が望ましいが、数値目標を掲げたことは一歩前進だろう。国会で審議中の関連法案にはこの制度の一般労働者への導入を努力義務とする項目も入る。厚生労働省は導入した企業への助成制度をさらに拡充するなど拡大へ後押しするべきだ。

 経営者は、従業員が健康で働けることができて初めて企業経営が成り立つと再認識してほしい。毎日一定の休息を取ることで精神的な余裕もでき新しいビジネスが生まれる素地も広がるだろう。

 大綱は過労死根絶を目指す政府の基本方針を示す。一四年に成立した過労死等防止対策推進法に大綱作成が明記され三年をめどに見直される。今回、見直しが行われ七月に閣議決定される。

 推進法は家族を過労で亡くした家族会が中心となり実現させた。与野党全会一致で成立、過労死防止を「国の責務」と初めて位置付けた。根絶へ政府の姿勢を示すはずのものだが、過労死が増えると批判のある高度プロフェッショナル制度(高プロ)の創設は、この動きに逆行している。

 高プロには経営者が講じるべき健康確保策が複数用意される。インターバル制度もその一つだが、どれを選ぶかは労使が話し合う。実際は経営に負担の少ない「臨時の健康診断」を企業が選ぶ可能性が高く、実効性を疑う。

 法案は参院で審議中だが、過重労働への懸念は払拭(ふっしょく)されていない。高プロ導入に向けて厚労省が行った専門職からの聴取のずさんさも明らかになった。高プロは法案から切り離し再考すべきだ。それが「国の責務」ではないか。

 

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