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社説

東電に賠償命令 故郷に生きる権利ある

 福島第一原発事故で福島県南相馬市小高区の住民らが起こした訴訟で東京地裁は東京電力に約十一億円の賠償を命じた。故郷に生きる利益を侵害したことを認めた。全国の訴訟に影響が出よう。

 原発事故をめぐる集団訴訟では、二〇一七年三月の前橋地裁、同年九月の千葉地裁、同年十月の福島地裁に次いで四件目の判決だ。今回の約十一億円という賠償額は過去最高になる。

 判決が最も重視するのは、被害の実情がもともとの生活の本拠である小高区からの強制退去。しかも長期にわたって帰還禁止を余儀なくされたことである。「憲法二二条で保障された居住、移転の自由に対する明白かつ直接の侵害である」とはっきり述べた。

 放射性物質が飛来し、生活基盤そのものが崩れてしまった。これについても判決は「基盤そのものの大幅な変容という事態にさらされ、過去に類を見ない規模の甚大な被害が生じた」と認める。

 「包括生活基盤に関する利益は、人間の人格にかかわるものであるから、憲法一三条に根拠を有する人格的利益と解される」とも指摘した。一三条は個人の尊重と幸福追求権の条文である。

 この地域の人々は野菜づくりや釣り、山菜採りなどで日々を送っていた。それが楽しみでもあった。そんな毎日が奪われた。

 人によりふるさとで暮らす楽しみはもちろん異なる。共通するのは、そんな暮らしが自分や家族の基盤をなしていたことである。

 判決の中では「包括生活基盤に関する利益の侵害があることは明らかだ」ともはっきり述べた。そして東電に賠償を命じる理由としているのだ。

 問題点もある。

 東電は国の指針に基づき既に一人当たり八百五十万円を支払うことになっている。今回の判決で約三百万円が上乗せされる。だが、約三百二十人の住民が東電に求めたのは一人当たり約三千三百万円、総額約百十億円だった。裁判所が認めたのは約十一億円。

 つまり十分の一でしかない。

 代理人の弁護士は「言葉の上でふるさと喪失を認めつつ、慰謝料は控えめな数字」と不満だ。住民も「納得できない」という。

 集団訴訟は全国で約三十件ある。判決を重ねるごとに「ふるさと喪失」などの理解は広がる。ただ適正な賠償とは何か。それを知るには、原告の人々が受けた原発事故の苦しみを再考するしかない。

 

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