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社説

外国人実習生 介護担える働く仲間に

 働きながら技能を学ぶ外国人技能実習制度が十一月から、介護分野にも拡大された。初の対人サービス職だ。やりがいを持って働き技能を身に付けてほしいが、制度が抱える問題は残ったままだ。

 依然として受け入れる目的は「技術を学ぶ実習」という位置付けだ。「働く仲間」として認める制度への転換が必要ではないか。

 制度は、海外への技術移転による国際貢献を目的として一九九三年に創設された。建設業や製造業を中心に現在、約二十五万人が在留している。

 だが、実態は安価に使える穴埋め労働者とみられ、数々の人権侵害が問題になっている。賃金の不払いや長時間労働は事例に事欠かない。失踪防止にパスポートを取り上げられたり、逃げ出したら母国にいる家族が多額の保証金の支払いを求められた事例もある。国際社会からも批判を浴びている。

 その改善に政府は十一月から制度を改めた。政府所管の外国人技能実習機構を新設、実習先への監視を強める。罰則もある。だが、機構の人員も限られる。どこまで監視ができるか分からない。

 そこに介護分野への拡大だ。介護は、高齢者と日々接する仕事だ。利用者の人柄を理解し、体の状態や気持ちをくみ取りながら生活を支える。専門用語も飛び交う。

 働くには日本語をはじめとした高いコミュニケーション能力が求められる。だから新制度では介護職に個別の条件を設けた。習得すべき語学レベルが設けられ、実習生には指導役も置かれる。

 それでも働く仲間として介護を担う人材に育っていけるのか不安が残る。既に介護現場では、政府間の経済連携協定(EPA)で来日した人たちが働く。出身国で看護師資格を持ち、手厚い日本語研修を受け、政府から育成の資金援助もある。介護福祉士資格を取ることも要求されている。

 それに比べると実習生の研修は見劣りする。求められる語学能力の基準は低い。結局、入浴介助などきつい作業ばかりをやる「使い捨て」人材になりかねない。トラブルが起きないだろうか。

 技能を学ぶ実習生ではなく労働者として活用すべきだとの議論は置き去りのままだ。貴重な働き手と見なさない意識が、不当な扱いを生んでいないか。

 少子高齢化を考えれば介護人材は必要だ。ならば日本人の待遇改善が解決への本筋のはずだ。人手不足だからと安易に外国人に頼るのはお互いの利益にならない。 

 

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