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社説

座間事件 ネットに「命の門番」を

 ネット空間には悪意も潜んでいる。神奈川県座間市のアパートで九人の遺体が見つかった事件はその怖さを再認識させた。生きづらさを抱えた人に気づき、救いに導く「命の門番」を増やせないか。

 犠牲者は十五〜二十六歳の女性八人、男性一人。高校生三人と大学生一人が含まれるようだ。死体遺棄の疑いで逮捕された二十七歳の男は、十月までの約二カ月間に相次いで手にかけたことを認めているという。

 調べに「楽して生活したかった」と供述しているというが、本当に金めあてだったのか。かつて父親に「生きていても意味がない」と語っていた。心神の状態をにらみつつ全体像を解明してほしい。

 遺体を切り刻み、クーラーボックスなどに保管したり、捨てたりしていたという。その残忍さには絶句させられるが、猟奇性ばかりに目を奪われてはいられない。

 男と女性たちの接点は、会員制交流サイト(SNS)のツイッターだった。物心がついたときには、ネット空間がすぐそばにあった世代だ。その落とし穴をどうふさぐか知恵を絞らねばならない。

 自殺願望を書き込んだ女性たちに「一緒に死のう」などと同情するふりをして、誘い出していたようだ。だが、男は「誰も本気で死にたいとは思っていなかった」と話しているという。女性たちは間違いなく救済を求めていた。

 つらい境遇に置かれても、はぐらかされたり、否定されたりするのを恐れ、誰かに胸の内を打ち明けるのをためらう人は多いという。だから、身元を伏せて弱音を吐けるSNSにすがるのだろう。

 大切なのは、それを生きたいという切なる思いの発露として受けとめることではないか。女性たちのそうした孤立感や絶望感につけ込んだ犯行は悪質極まりない。

 現に自殺に追い込まれる若者は後を絶たない。十五〜三十九歳の死因のトップは自殺だ。全体の自殺者は減少傾向にあるものの、若年層の減り方は鈍い。

 現実の社会では自殺の兆候に気づき、耳を傾けて支援につないだり、見守ったりするゲートキーパー(命の門番)の養成が進んでいる。地域や職場、学校、行政などに広がるが、普通のネット利用者が手伝えることはないか。

 自殺を助長する記載を運営会社に通報する。自殺をほのめかす人に相談窓口を示す。専門性の有無を問わず、ネット利用の心構えとして浸透させられないか。無数の善意をあげて向き合いたい。

 

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