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社説

朝鮮通信使 「誠信交隣」に学びたい

 朝鮮通信使に関する記録が「世界の記憶」(世界記憶遺産)に登録されることが決まった。日韓両国の市民団体が「平和の遺産」として共同申請したことが評価されたもので、率直に喜びたい。

 見出しにある「誠信交隣」(誠実と信頼の交際)は、通信使に随行した対馬藩の儒学者雨森芳洲(あめのもりほうしゅう)が重視した言葉だ。それを実践した朝鮮通信使は、平和外交の模範といえる。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の事業である記憶遺産への登録が決まったのは、「朝鮮通信使に関する記録」計三百三十三点で、両国に残る外交文書、絵巻などが含まれる。

 朝鮮通信使は、豊臣秀吉の朝鮮出兵で途絶えた朝鮮と日本の関係改善が狙いだった。朝鮮国王が徳川将軍家に派遣し、江戸時代の約二百年間に計十二回実施された。

 五百人にも及ぶ大使節団は、釜山から日本の対馬に渡り、大阪、名古屋、静岡などを経て、江戸で国王の書簡「国書」を手渡した。

 宿所には日本の学者らが競って訪れ、学問論議を交わした。庶民も異国情緒あふれる行列を楽しみ、その姿は今も各地に絵図や人形として残っている。

 朝鮮側も、沿道で出迎える人々の礼儀正しさを知って、日本への警戒心を和らげたと伝えられる。

 今回の登録には、もうひとつの意味がある。韓国の民間団体「釜山文化財団」と、「NPO法人朝鮮通信使縁地連絡協議会」(事務局・長崎県対馬市)が、四年の歳月をかけて各地で関連の事業を行い、通信使の意義をアピールし、相互の理解を深めたことだ。

 共同申請では、資料の選定、費用負担などで、二つの団体の意見が対立することもあった。

 「朝鮮通信使」の英語表記もその一つだった。韓国語では「チョソン トンシンサ」と読む。結局、日韓の読み方を英語に直して、併記した。「誠信交隣」の精神を示そうと双方が譲った。

 記憶遺産に関しては、中国の南京事件資料や日本のシベリア抑留資料の登録を巡り、日本と周辺国で摩擦が起きた。今回も旧日本軍の慰安婦関連資料の申請があったが、登録判断は延期されている。

 記憶遺産は、摩擦を拡大するためのものではないはずだ。

 あらためて、二つの国を近づけた朝鮮通信使の知恵と工夫を学びたい。そして、国を超えて民間団体が共同申請する今回のような記憶遺産を、増やしていきたい。

 

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