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社説

政治に良識取り戻すため 週のはじめに考える

 衆院選があす公示されます。従来にも増して混沌(こんとん)とした中での選挙ですが、政治に「良識」を取り戻すため、論戦に耳を傾け、主張を吟味しなければ。

 振り返れば、一カ月前の九月上旬、今のような政治状況を、誰が想定できたでしょう。

 東京都知事の小池百合子代表率いる「希望の党」が慌ただしく結成され、前原誠司新代表を選んだばかりの民進党は分裂し、多くは希望の党に合流。それ以外は枝野幸男元官房長官率いる「立憲民主党」と無所属に分かれました。本格的な野党再編の始まりです。

慎むべき解散権乱用

 引き金を引いたのは、安倍晋三首相による衆院解散でした。解散理由に、消費税増税分の使途変更の是非を国民に問うとともに、北朝鮮対応に向けた政権基盤の強化を挙げました。自ら「国難突破解散」と名付けます。

 とはいえ、野党側の憲法五三条に基づく臨時国会召集要求を三カ月以上放置し、召集した途端、審議を全く行わない冒頭解散です。憲法の趣旨に反し、とても良識ある判断とは言えません。

 衆院は「常在戦場」とはいえ唐突感が拭えません。国難と言うなら首相がすべきは解散でなく、国会審議ではなかったか。

 野党側の選挙準備不足を突いた「抜き打ち解散」であり、学校法人「森友」「加計」両学園の問題をめぐる追及を避けるためと指摘されても仕方ありません。

 衆院解散は、国民の代表たる議員を行政が失職させる行為です。憲法に定めがある内閣不信任の場合以外では、政府提出の予算案や重要法案が否決されたり、国論を二分する問題が生じた場合に限るべきではないか。良識ある政治に戻すには、解散権の乱用は厳に慎むべきです。選挙戦を通じて、議論を深めたらどうでしょうか。

原発依存はいつまで

 衆院選は国政のかじ取りを託す政権選択選挙です。政権側は首相の解散判断に加え、安全保障関連法の成立強行など強引な国会・政権運営を続け、九条など憲法改正に踏み込もうとする「安倍政治」そのものの是非が問われます。

 選挙戦の構図は、政策に若干の違いがあるものの、おおむね「自民党・公明党」「希望の党・日本維新の会」「立憲民主党・共産党・社民党」の三極に分かれます。

 私たち有権者は、各党の公約集を読み比べたり、政党・候補者の訴えに耳を傾けて、大切な票を投じなければいけません。少し面倒でも未来への私たちの責任です。

 例えば、消費税です。自公両党は二〇一九年十月に予定されている10%への引き上げを前提に使途変更や軽減税率の実施を訴える一方、野党側は増税凍結や中止を求めます。増税は景気を冷やし、前提の行政改革や歳出削減も進んでいない、などの理由からです。

 消費税は低所得者の実質的な税負担が重くなる逆進性も指摘されます。増税が妥当なのか。税の在り方は議会制民主主義の成り立ちの根幹に関わります。決めるのは有権者の責任であり、権利です。

 原発については、重要な基幹電源と位置付ける自民党以外の各党は、原発ゼロや既存原発を徐々になくす脱原発を公約しています。

 一度事故が起これば、人々から故郷を奪い、その処理に多大な国民負担を強いる原発に依存し続けることが正しいのか。自民党政権が続く限り、原発がなくならない現実を直視して、投票行動を決める必要があります。

 気掛かりなのは、希望の党が首相指名候補を明示していないことです。小池氏は首相指名の前提となる衆院選への自らの立候補を否定し、「選挙の結果を踏まえて考えたい」と述べています。安倍氏以外の自民党議員の首相擁立を想定しているのかもしれません。

 しかし、政権選択選挙と位置付け、安倍政権打倒を目指す以上、首相指名候補を掲げて有権者に審判を仰ぐのが常道ではないか。結成間もないとはいえ、政党としての責任を放棄してはならない。

「安倍政治」への審判

 突然の解散による政治の混乱は首相に責任があるとはいえ、五年近くの「安倍政治」に有権者が審判を下す機会でもあります。

 「国難」と喧伝(けんでん)する政権側の思惑や、眼前の慌ただしい展開に惑わされることなく、各党・候補者の公約や政治姿勢を見極めたい。

 各党の政策集は多岐にわたります。どの政党・候補者に投票するか、悩ましいところですが、すべての政策に同意する必要はありません。重視する政策を「じぶん争点」に設定し、自分の考え方に近い投票先に決めればいいのです。

 あすから投票日までの間は、未来を決める準備期間と考えれば、混沌の中にも光が見えます。有権者一人一人の深慮の積み重ねが、政治に良識を取り戻す大きな力になると信じています。

 

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