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社説

電通に罰金 命を守る職場でないと

 広告大手の電通の違法残業事件で東京簡裁は五十万円の罰金を命じた。電通社長は法廷で「過重労働を撲滅する」と誓った。どんな職場であれ、労働環境を見直し、働く人の命を守らねばならない。

 勤務記録のペーパーがある。二〇一五年十二月に新入社員の高橋まつりさん=当時(24)=が、自殺する二カ月前の出勤時間と退勤時間の記録。さらに会社のゲートを入館した時間と退館した時間。普通なら仕事が終われば、なるべく早く社屋を出るだろう。だが、高橋さんの場合は、この時間に大きなずれがあるのだ。

 このずれについて、理由が付されている。「社内飲食」「懇談」「休息」…。休日・祝日は出勤記録はないのに、会社のゲートには入館していて、理由は「私的情報収集」「自己啓発」…。

 高橋さん遺族の弁護士によれば、違法残業を隠蔽(いんぺい)するために電通は、終業時刻と退館時刻に一時間以上の乖離(かいり)があった場合、労働者に勤務登録システム上で「在館私事理由」を自主申告させていたという。高橋さんが「社内飲食」と書いていたのも上司からの指示であり、実際には違法残業をしていたとみられている。

 高橋さんは自殺する前月にうつ病を発症したとみられるが、労災認定にあたった労働基準監督署は発症前一カ月の残業時間が月約百五時間に達したと判断している。会社は労働時間をきちんと把握していたのか。これでは労働者は精神的にも肉体的にも疲弊する。

 電通には有名な「鬼十則」の精神がある。「取り組んだら放すな、殺されても放すな」などだ。それが社風で団結力をもたらす一方で、追い詰められた社員もいたはずだ。電通社長は法廷で謝罪し、再発防止を約束したが、働く人の命を守る労働環境でなくてはならないのは当然である。

 問題は電通ばかりではない。NHKでは一三年に首都圏放送センターの佐戸未和記者=当時(31)=が長時間労働で過労死していたことが判明した。労基署が認定した亡くなる一カ月前の時間外労働は百五十九時間。選挙取材だったというが、勤務管理は十分できていたのか。

 使用者側はまず労働者の増員、一人あたりの業務量の削減などの抜本策を講じなければならない。上司も労働時間の規制に対する認識の甘さを改めないといけない。企業努力だけでなく、罰則強化もいる。労災には独自の罪を設けるのも検討課題だろう。

 

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