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社説

医師の働き過ぎ 健康でこそ命預かれる

 医師の長時間労働を減らす議論が厚生労働省の有識者検討会で始まった。勤務医は残業や夜勤など激務が問題化している。患者の命を預かる医師が過労で倒れては元も子もないというものだろう。

 政府が三月にまとめた「働き方改革実行計画」では、残業時間の上限を「月百時間未満」とする規制策を盛り込んだ。医師はこの規制の適用を五年間猶予された。患者が診療を求めれば拒めない「応召義務」があるからだ。

 医師は、命を救うという使命感が強い。多くの患者を診察する病院の勤務医は残業をいとわず、宿直や急な呼び出しにも対応している。職場に医師の過労問題には目をつぶる雰囲気もあるだろう。

 だが、激務から心身を休める余裕がない。七月には、懸命に診療を続けていた産婦人科の三十代男性研修医の自殺が、長時間労働で精神疾患を発症したことが原因だったと労災認定されたばかり。研修医に休日はほとんどなく、自宅の冷蔵庫には何もなかったという。私生活もない状態で、自身の命を脅かす働き方は尋常ではない。

 厚労省によると、週の労働時間が六十時間を超える人の割合は雇用者全体の平均で14%。医師は41・8%でトップだ。過去五年間に過労死や過労自殺した医師は十人に上る。

 七月には最高裁が、勤務医の年俸に残業代は含まれないとの判決を出した。つまり通常の賃金と残業代を明確に線引きし、労働時間規制の重要性を示したといえる。

 医師の残業をどう減らすか、検討会で二年かけ議論する。ただ、八月の初会合は協議の難航を予想させた。大学病院長は「医師は診療、自己研究、教育の三つの業務がある。どこからどこまでと業務を切り分けられない」と指摘した。別の医療関係者は「医師の勤務には自己研さんの面があり、制限されることに不満を持つ医師もいる」と慎重な対応を求めた。

 残業を減らせばその分、医師を増やすなど将来必要な医師の養成問題に影響する。確かに一律に規制をかけることは難しい。ここは知恵を出し合うしかない。

 負担が重くなりがちな若手とベテランとの分担見直しは必要だろう。診断書作成などの事務作業や、患者への説明など医師の業務をもっと他職種に任せたい。看護師にも医師と協力して医療行為ができるように業務の幅を広げられる余地はあるのではないか。

 医師も紛れもなく労働者であることを忘れないでほしい。 

 

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