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社説

子宮移植 社会全体で議論深めよ

 生まれつき子宮のない女性などを対象にした子宮移植が実現に向け、動きだした。生命維持が目的ではない移植で実施までにはクリアすべき問題も多い。関係機関が一体となり議論を深めてほしい。

 子宮移植は、生まれつき子宮のない「ロキタンスキー症候群」の女性やがんなどで子宮を失った女性が対象。提供者は、当面は母親など肉親が中心になる。

 スウェーデンで世界に先駆けて出産に成功。少なくとも五人の子どもが移植後に誕生したという。米国、トルコなど数カ国でも移植が行われている。免疫抑制剤の長期投与などで移植開始から出産まで二年半以上かかるといい、スウェーデン以外では、まだ出産の報告はなされていない。

 わが国では、二〇〇八年から東京大、京都大、慶応大などの産婦人科医らが中心になり、動物実験などを実施、技術的には移植可能との判断がなされている。

 今回、プロジェクトチームを設置し、移植実施に動きだした名古屋第二赤十字病院は移植外科を持ち、腎移植では全国有数の実績を持つ。さらには腎臓移植者を対象にした出産外来も実施しており、施設としての環境は整っている。今後は院内の倫理委員会などでの検討を経て、実現を図る。国内数カ所の施設でも実施に向けた研究を進めている。慶応大では本年度中にも倫理委員会に諮る予定だ。

 移植実現には課題が多いのも事実だ。出産例が少なく、データが少ないのがその一つ。出産後の母子や提供者の健康維持のため、万全の準備で臨んでほしい。

 また、これまでのわが国の生殖医療では代理母など第三者が関与する方法は認められていない。母親とはいえ、第三者が関わることになる。実現には社会的な合意も必要かもしれない。

 ただ、自分のお腹(なか)を痛めて出産することを望む患者にとって新しい生殖医療の選択肢の一つであることには間違いない。生まれてくる子どもの親子関係がはっきりするのは代理母と決定的に違う。

 実現に向けては、まず各地で検討を行っている施設、関係者間の協力が欠かせない。情報交換、人的な交流など一体となった取り組みが必要なことは言うまでもない。

 子宮移植はこれまでの臓器移植、生殖医療のあり方を大きく変える医療だ。関係者だけでなく、社会全体での議論も必要だ。そこでは患者サイドに立った視点を忘れないでほしい。

 

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