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社説

中国の海洋進出 「紙くず」と切り捨てず

 中国の強引な海洋進出に国際社会が批判を強めている。中国は「軍事化とは無縁」と強弁するが、国際ルールを無視するような一方的な「合法的権利」の主張こそが地域の安定を損なっている。

 シンガポールで今月初旬に開かれたアジア安全保障会議で、マティス米国防長官は「一方的で威圧的な現状変更は容認しない」と述べ、南シナ海で人工島造成や軍事拠点化を強行する中国を強くけん制した。

 対北朝鮮制裁で協力を求めてきた米国の対中批判だけに、中国は予想外に厳しいと驚いたようだ。だが、米国が国際ルールを順守するよう中国にあらためてクギを刺したことは極めて重要だ。

 国内統治で「依法治国」を掲げる中国だが、国際ルールについては、自国優先のご都合主義が目に余ると批判されても仕方がない。

 マティス長官の批判に対し、中国政府は「自国領土に必要な防衛施設を配備するのは主権国家の自衛権であり、軍事化とは無関係だ」と、強く反論した。

 だが、昨年七月、国際的な仲裁裁判所が、南シナ海で中国が主権を主張する根拠を否定し、人工島建設を国際法違反とする判決を出したことを忘れてはならない。

 この判決に対して、中国高官から「紙くず」と切り捨てるような発言すら聞かれた。海洋進出を正当化するような中国の一連の言動は、国際的なルールを踏みにじり自ら主張する権利しか守らないというごう慢な態度にも映る。

 領有権争いは、国際法をはじめとするルールに従い、平和的に解決すべきである。中国は自分本位な主張を取り下げ、新たな人工島造成をやめて、周辺諸国との誠実な対話に乗り出すべきである。

 対話の動きがないわけではない。中国とASEANは五月に南シナ海での紛争防止のための「行動規範」の枠組み草案で合意した。法的拘束力のある行動規範策定に消極的だった中国の前向きな変化であれば、注目していきたい。

 東シナ海に目を向ければ、資源開発や紛争予防について話し合う日中間の高級事務レベル海洋協議が半年ぶりに開かれる機運が高まっている。日中関係改善の兆しとして歓迎できる。

 周辺国と協力し、南シナ海を平和な海とする努力は、習近平政権が主導する重要政策「シルクロード経済圏構想(一帯一路)」の実現に大きな弾みとなることも自覚してほしい。

 

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