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社説

脱アベノミクス 民進党は対立軸を示せ

 「経済の好循環」「財政再建と経済成長の両立」など掛け声倒れの空手形はもう十分だ。いつまでも道半ばのアベノミクスから脱却せねば国民生活は改善しないだろう。新たな経済社会像が必要だ。

 「期待できない経済成長に依存するのではなく、将来不安を取り除けるような新しいモデルを示してこそ、アベノミクスへの対立軸たり得る」

 二十七日の結党一年を前に初めて開かれた民進党大会。党員の心に最も響いたのは来賓として招かれた井手英策・慶応大教授のあいさつではなかったか。

 民主党に維新の党が合流して結党した民進党だが、民主党政権時代に失った国民の信頼は回復できないままである。安倍政権が閣僚の辞任など失策がないわけではないのに「自民一強」を許しているのはなぜか。

 それは民進党がよって立つ国家像、とりわけアベノミクスへの対立軸を示せないためだろう。

 井手教授によれば日本の現状は「みすぼらしい社会」だという。家計所得は、この二十年で二割落ち込んだ。年収三百万円以下の世帯が34%を占め、貯蓄率ゼロ家庭も二割。高齢者世帯で生活保護を受給する世帯は倍増した。だが現役世代への社会保障サービスの水準は先進国で最低。財政は逼迫(ひっぱく)し、再分配機能を失ったからだ。

 かつて北欧諸国と並ぶ平等主義といわれた姿はなく、格差社会いや格差放置社会である。困っている人がいても「自己責任だ」として切り捨てる冷たい社会なのだ。

 アベノミクスは、富裕層をますます富ませる一方で経済弱者を大量に増やし社会の分断を強めた。中間層から低所得層への転落が増える中で起きたことは、生活保護の不正受給がわずかなのに、さも多いかのような受給者たたきだった。弱者が、より弱い立場の人をたたく絶望的な構図である。

 アベノミクスは楽観的な成長見通しの下で消費税増税を再三先送りするなど財政規律をすっかり失った。税負担が軽いということは社会保障サービスを再分配でなく自己負担、自己責任で担えと同義である。

 逆に税負担を増やせば自己負担は軽くできるということだ。

 対立軸は明らかだ。目指すのは危うい成長頼みでなく、また自己責任の恐怖におびえる国でもない。負担能力に応じて誰もが負担し、誰もが受益者となる。弱者たたきもなく、負担を分かち合って安心して暮らせる社会である。

 

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