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社説

南スーダン撤収 治安悪化を語らぬ詭弁

 撤収判断自体は妥当だが、現地の治安悪化を考えれば、なぜもっと早く決断できなかったのか。政府は自衛隊の施設整備に一定の区切りがついたことを理由としているが、詭弁(きべん)にしか聞こえない。

 政府が十日、アフリカ南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊の部隊を五月末をめどに撤収させることを決めた。派遣から五年以上が経過し、道路補修や避難民向けの設備整備などに「一定の区切りをつけられると判断した」(安倍晋三首相)と説明し、治安の悪化が理由ではないと否定している。

 現地では、昨年七月に自衛隊が派遣されている首都ジュバで政府軍と反政府勢力との武力衝突が起きるなど厳しい治安情勢が続く。内戦状態が「ジェノサイド(民族大量虐殺)」に発展する恐れを、国連が度々警告する状況だ。

 紛争当事者間で停戦合意が成立していること、というPKO参加五原則のうち最も重要な原則が破られたことを意味する。武力衝突が起きた時点で直ちに撤収を決断すべきではなかったのか。

 政府が撤収を検討し始めたのは昨年九月だったという。現地の部隊からは首都で「戦闘」や宿営地近くで「激しい銃撃戦」が起きたことが日報で報告されていた。

 しかし、安倍内閣はその後、昨年十月までだった派遣期間を五カ月間延長し、派遣部隊に「駆け付け警護」と「宿営地の共同防衛」の任務を与えた。安倍政権が二〇一五年に成立を強行した安全保障関連法で加えられた任務である。

 治安情勢の悪化を認識しながら派遣を継続したのは、強い反対があった安保法を既成事実化する狙いからと勘繰りたくもなる。現地が報告した「戦闘」を「法的な意味での戦闘行為はなかった」と言いつくろい、派遣隊員を危険にさらす行為は断じて許されない。

 PKO参加五原則があるのは、日本国憲法九条が海外での武力の行使を禁じているためだ。戦後日本の平和国家の歩みは、国際的な信頼と経済的繁栄につながった。この歩みは止めるべきではない。

 政府は部隊撤収の一方で、国民対話や人材育成、食料を含む人道支援を継続・強化することも表明した。南スーダンの安定に引き続き関与する姿勢は評価したい。

 戦後、廃虚から立ち上がった日本の経験や知見を、新しい国造りに生かせるはずだ。専守防衛に徹する平和国家だからこそできる国際貢献を追求すべきである。

 

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