トップ > 社説・コラム > 編集局デスク一覧 > 記事

ここから本文

編集局デスク

「戦争と平和」の憲法

 <疲れ寝ぬる夜ごと枕辺に「戦争と平和」を置き五六頁づつ読む>

 敗戦直後、法制局長官として新憲法制定に力を注いだ入江俊郎氏の歌です。「戦争と平和」とはトルストイの名作でしょう。多くが倒れた戦争の時代。焦土にやっと戻った平和の日々。人々を考え込ませたはずです。

 そして、氏はこう詠みました。<新憲法成りたるときの国会の一瞬のしじま忘れて思へや>

 新憲法が制定されたときの厳粛さが伝わります。平和主義を高らかにうたう憲法を知り、復員した兵士が泣いたという話も読みました。この憲法があって戦後の日本はまずは豊かに発展しました。戦闘で一人の命も失われることなく歩むことができたのです。

 その憲法が施行七十年を迎えた五月三日、首相は「二〇二〇年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明しました。まず読売新聞紙上で、九条に自衛隊の存在を認める文言を追加したいと語りました。

 四年前には、九六条が定めた改憲発議の緩和を語っています。翌年には、有事での国会議員の任期延長などを認める緊急事態条項の新設に意欲をみせ、今度は九条の追加です。

 二〇年は東京五輪で「新しく生まれ変わった日本がしっかり動きだす年だ」と述べています。改憲にどんな関係があるのでしょう。国会の答弁では「読売新聞を熟読して」と語りました。さすがに自民党内でも「国会議論の行く末や期間を行政の長が規定することにつながりかねない」とくぎを刺す声が出ています。

 あまたの犠牲を礎にして生まれた今の憲法のいわれと、それが支えてきた平和の重さ。為政者なら忘れてはならないでしょう。

(名古屋本社編集局長・臼田信行)

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索