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編集局デスク

コモン・センス

 「平和をつくるより戦争をする方がたやすい」「戦争は軍人に任せるにはあまりに重大な問題だ」。第一次大戦時の仏首相クレマンソーの言葉です。

 その洞察どおり、戦前の日本は軍主導で戦争に突入します。この反省から、戦後の自衛隊はシビリアンコントロールの下で活動してきました。自衛隊が、首相や防衛相の指揮権に服する文民統制です。

 それが危なっかしく見えます。南スーダン国連平和維持活動に派遣された陸上自衛隊の日報問題。昨年七月の分が、情報公開請求では「破棄」とされたのに、統合幕僚監部や陸自に保管されていました。現地勢力間の「戦闘」が書かれた記録だから当然でしょう。

 統制する側の大臣らもどれだけ現地の状況を重く見ていたのか。この十日、首相は五月の撤収を発表しました。政府は昨年九月に考えはじめたそうですが、その二カ月後に、隊員の危険が増す「駆け付け警護」の新任務を与えています。唐突な撤収発表に「振り回されるのはいつも現場だ」と戸惑う現地隊員の声を読みました。

 四十年ほど前、制服組トップが「超法規的行動」の可能性を語って更迭された際、元防衛大学校長猪木正道氏は『文芸春秋』に書きました。専門職として軍人に防衛を一任すると際限なく軍備を拡充する恐れがある。「そこで、センモン(専門)・センスの行き過ぎにブレーキをかけるために、国民を代表する政治家のコモン・センスが必要不可欠となる」と。

 コモン・センスとは、「万人に共通する判断力」でしょう。「戦闘」の現実を正面から見据えて考えるのが、政治家のコモン・センスのはずなのに、それがうかがえない。自衛隊派遣は今の大臣らに任せるにはあまりに重大な問題だとさえ思えてきます。

(名古屋本社編集局長・臼田信行)

 

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