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<ミラクル至学館 センバツ聖地へ>(下) 鍛えた精神力

部室の扉に張られた「凡事徹底」の言葉。当たり前のことを全力でやることが精神力を鍛える=名古屋市東区の至学館で

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 スタンドのスコアボードには「1−3」と表示されていた。中京大中京と対戦した昨年秋の東海大会準決勝。九回裏2死で走者はなく、敗戦が濃厚に見えた。

 しかし、主砲の鎌倉裕人選手(三年)の耳には、盛り上がるベンチの声援が聞こえた。チームが負ける姿は想像できなかった。声に押されてか、強打した打球は相手二塁手の失策を誘った。

 次の井口敦太(あつひろ)捕手(三年)も死球で出塁。「相手が焦っている」。打席に立った新美涼介投手(三年)は前打席で多く投げられていた変化球に狙いを絞った。自信を持って振り抜いた打球は右中間へ。走者二人をかえした。続く中根健太選手(二年)も流れに乗り、適時打で逆転サヨナラ。センバツ大会の出場権を引き寄せた。

 愛知大会初戦の愛工大名電、準々決勝の東邦、三位決定戦の享栄、そして東海大会の中京大中京。全国に名がとどろく私学四強に、いずれもサヨナラ勝ちを収めてきた。「先制できる打撃がないから、前半は勝負の読みに徹する。こういう展開が多くなる」と麻王(あさお)義之監督(53)は控えめに言う一方、「冷静でいる心の強さがうちの選手にはある」と話す。

 至学館の勝利は周囲に「ミラクル」と言われてきたが、もはや奇跡とも呼べなくなっている。二〇一一年夏の甲子園初出場の時も、1点差で相手の追撃を振り切るなど僅差の勝利を重ねて愛知の代表をつかんだ。当時の主将で現在、コーチを務める岡大樹さん(23)は「ここぞというときの集中力は、いまのチームも共通する」と話す。

 「凡事徹底」。部室の扉などさまざまな場所に書かれた紙が張ってある。目の前にごみがあれば拾う。校庭が使えなければ、体力づくりに全力で取り組む。新チームになった昨夏、七十三人の部員全員で誓った合言葉だ。「やるべきことを全力でやってきたからこそ、ピンチに動じない。逆にやってやろうという気持ちが湧く」と新美投手は強調する。

 試合前に必ず十五分ほど行う座禅も平常心を養うすべだ。心を「無」にして集中力を高め、気持ちを途切れさせることがない。創部以来、続けてきた。「能力だけではない、見えない部分」こそが至学館の強さ。麻王監督はそう感じている。

 (この連載は安福晋一郎が担当しました)

 

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